日本経団連タイムス No.2850 (2007年3月8日)

環境安全委員会を開催

−今後の温暖化対策にかかる国際枠組作業の状況を聴取


日本経団連の環境安全委員会(新美春之共同委員長、鮫島章男共同委員長)は2月14日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催、地球温暖化の悪影響に対する懸念が高まっており、地球規模での温暖化対策が急務となっていることを受け、今後の温暖化対策にかかる国際枠組作業をめぐる状況について、西村六善地球環境問題担当大使と懇談を行った。

西村大使は、「温暖化は、将来の制約につながる深刻な問題だが、単純に、それだけではなく、幅広い視野からの対応と将来を見通した選択が求められている」との問題認識を示した。その上で温暖化が地球規模の問題であることに関連して、「途上国は異口同音に、産業革命以降欧米先進国が工業化、生活水準向上をめざした結果温暖化が進んだという先進国の歴史的責任論を主張しているが、仮にそれを認めたからといって、温暖化の問題が解決するわけではないと説得している」現状を説明した。また、途上国に対して、「先進国の経験を活用すれば短期間での生活水準やエネルギー効率の向上が可能なことを官民の高いレベルで働き掛けていくこと」「知的財産権を保護しつつ技術の移転にも前向きに取り組むこと」が大事であると指摘した。

他方、先進国の動向に関して、まず欧州については、「最近、温室効果ガスの濃度の安定化の必要性と早期の枠組みの決定を強調しており、その観点から、1月10日に、2020年のCO2排出量を、1990年比で20%削減、国際的合意がある場合には30%削減という新エネルギー政策案を発表した。欧州は、ロシアに対抗してエネルギー安保を確保しつつ経済成長と競争力の確保を図ろうとしており、その過程でCO2濃度安定の考えと重なりが出ているのが現状である」との見方を示した。しかし、「欧州も必ずしも一枚岩ではない。新エネルギー政策案発表直後にUNICE(欧州ビジネス協議会)は、欧州の一方的な取り組みでは欧州経済は疲弊するというコメントを発表した。また、昨年11月産業担当のフェルホイゲンEC委員が15%以上の削減は欧州の競争力を低下させるので好ましくないというレターを委員長宛に提出している。さまざまな議論がある中で、3月上旬に欧州サミットで方針が決定される予定だ」と述べた。

他方、米国の動向について西村大使は、「昨年11月の中間選挙後の動向が注目されているが、ブッシュ大統領のみならず議会においても、中国、インドなどの途上国が参加していない枠組みは米国経済に深刻な打撃を及ぼすので、これらの国を何としても参加させるべきだという意見が強い」「現在、米国議会でキャップ・アンド・トレード制度導入に関する法案が1ダース提出されているが、いつ成立するかは予測できない。否決の可能性もあり、冷静な見方が必要である」「最近10の有力米国企業が強制的なメカニズムの導入を求めたが、他方で全国的規制に反対している企業も多い。簡単に解決するとは思えない」と説明するとともに、「最近、米国が、中国、インド等の途上国だけでなく、米国の主要な貿易相手国にも同じような仕組みを要求する言い方になっていることには注意する必要がある」と指摘した。

西村大使は、日本については、「30年間省エネに取り組み、乾いたタオルを絞ってきた結果、世界で最も高いエネルギー効率を実現した。そのため、温室効果ガス排出量を10年以内に大幅に削減することは難しい」との認識を示す一方、「だからといって日本のような世界第2の経済大国がこの問題に消極的な態度を取っていくことはできない。日本は、日本自身の国益のため、化石燃料依存度を下げて新しい成長モデルを構築すべきだ。CCS(炭素分離・貯留)や電力転換、省エネなどのほか、民生、運輸部門も含めて、20年後、50年後にはどれだけ化石燃料への依存を減らすのか、その分排出をどれだけ削減するのかというシナリオを描くべきだ」と述べた。

【産業第三本部環境担当】
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