日本経団連タイムス No.2851 (2007年3月15日)

規制改革会議発足の経緯と今後の運営方針

−草刈副会長(規制改革会議議長)が常任理事会で説明


日本経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で常任理事会を開き、規制改革会議の議長を務める草刈隆郎日本経団連副会長から規制改革会議の発足の経緯、今後の運営方針について説明を受けた。規制改革会議は規制改革・民間開放推進会議の後継組織として今年1月、内閣府に設置されたものである。草刈副会長をはじめ、民間有識者15名から構成されている。草刈副会長の説明要旨は次のとおり。

規制改革の歴史は、1995年の規制緩和小委員会の設置を機に始まり、以来、規制改革会議が6代目の組織に当たる。その間、規制緩和から規制改革へ、経済的規制から社会的規制へと活動の力点が変遷した。これまでの規制改革の達成度は2、3割との見方もあり、引き続き、規制改革への取り組みが重要である。

規制改革会議の発足に当たり、委員間で2つの基本認識を共有した。第1は、規制改革はイノベーションの創造、地方の活力向上、オープンな社会の構築、再チャレンジ可能な社会の実現の牽引力であり、行財政改革の重要な一翼を担うということ。第2は、サービス産業・非製造業は官の関与が強く、生産性も低く、イノベーションが足りない分野が多いが、逆に言えば規制改革によって成長が期待できる重要な戦略分野である。消費者・生活者ニーズの実現を阻害する規制を、成長阻害要因ととらえ、その撤廃・緩和を果断に進めていくことである。

また、検討に当たっては、(1)規制改革におけるPDCAサイクルの着実な実施(2)消費者・生活者の現場からの要望の反映(3)定量的な効果測定を踏まえた、短中長期の取り組み――の3つの視点を重視する。6月と秋に、民間から規制改革要望と特区提案を集中的に受け付ける「あじさい月間」「もみじ月間」についても、現場主義の観点から、再活性化したい。

規制改革会議では、5月下旬までに第1次答申を取りまとめる予定である。その際、特に重点的に取り組むべき課題を7つ取り上げ、「ダッシュ7」と命名し、集中的に取り組む。具体的には、(1)育児休業期間の分割取得等、育児休業取得の円滑化(2)医療のIT化の促進(3)港湾・航空・物流インフラに関わる制度、運用の改革(4)資格者等の学歴・年齢要件等の見直し(5)地方の産業・観光振興等に向けた阻害要因の見直し(6)独法等公法人の業務の廃止・縮小、民間開放(7)規制の見直し時期の設定、強制力のある通知・通達の公表――である。このほか、教育分野や放送通信分野等、既往案件のフォローアップも行う。

規制改革会議は、「ダッシュ7」のほかに、次の重点分野・課題についても、調査審議を進める。具体的には、「(1)官業改革・横断的制度」として、事務・事業の民間開放のフォローアップ、独立行政法人等の見直し、法令や通知・通達の周期的見直しなどを行う。「(2)イノベーション・生産性向上」に関しては、学習者の立場に立った教育改革、高等教育等の強化、放送通信市場の活性化、コンテンツ産業の振興、エネルギー供給の効率化や輸送インフラの利便性向上のための制度改革、都市機能の有効活用のための制度整備などに取り組みたい。「(3)質の高い国民生活の実現」に関しては、育児休業制度の充実、認定こども園の活用促進、利用者と認可保育所との直接契約、利用者への直接補助制度の導入などを扱う。加えて、医療分野はほとんど改革が進んでいないので、中期的課題として取り組む。環境分野については、バイオマスの利用、地球温暖化対策の促進に取り組む。「(4)国際・オープン経済」については、外国人の受け入れの円滑化、アジアゲートウェイ構想の具体化、資格者の質の向上に向けた取り組み、金融市場の国際競争力向上や利用者の利便性向上に資する金融環境の整備などを進めたい。「(5)地域活性化」に関しては、農業、林業、漁業の活性化とともに、地域に密着した産業の振興につながる規制改革を進めたい。「(6)再チャレンジ」については、多様な働き方を可能とする労働法制の見直しなどに取り組みたい。

規制改革を進める上で、経済界の強力な指導、支援をお願いしたい。

【総務本部総務担当】
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