日本経団連タイムス No.2853 (2007年3月29日)

第35回中国地方経済懇談会を開催

−「活力と希望に満ちた日本・中国地域を目指して」テーマに


日本経団連(御手洗冨士夫会長)と中国経済連合会(中国経連、福田督会長)は14日、広島市内のホテルで「第35回中国地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、御手洗会長をはじめ宮原賢次副会長、米倉弘昌副会長、渡文明副会長、江頭邦雄副会長ら日本経団連首脳役員、中国経連会員など約220名が参加。「活力と希望に満ちた日本・中国地域を目指して」を基本テーマに、中国地域経済の活性化や自立的発展に向けた取り組みなど、中国地域が抱える課題を中心に意見を交換した。

開会あいさつした中国経連の福田会長は、中国地域の経済情勢について、輸出が引き続き増加する中、設備投資の動きも広がりをみせるなど、全体として景気回復を続けているものの、地域や企業規模、業種によって景気回復のテンポに差がみられるとの見方を示した。さらに急激な少子・高齢化やグローバル競争の激化など社会経済が大転換する中、景気拡大をさらに長期にわたって持続させ、日本経済を力強い成長へと導くことは容易でないと指摘した上で、中国経連としてこうした時代の趨勢に対応し、地域の進むべき方向を示す「中国地方新生ビジョン」を昨年発表したことを紹介。同ビジョンの中心課題として、(1)中国地方の経済をグローバル化した地域間競争に打ち勝つものとしていくためには、地域の強みである製造業の多様性を活用することが重要(2)地域の産業競争力を支えるインフラとして交通基盤整備も大きな課題(3)地域が主体となって産業、文化、歴史、自然などのポテンシャルを最大限活かし、地域を発展させるためには、中央による画一的なコントロールから、分権型国家へと国のかたちを根本から変え、地域のことは地域で決定できる仕組みにすることで自助努力を促し、その活力を掘り起こすことが重要であり、道州制の導入が必要――との3点を説明した。特に道州制の導入について、日本経団連が優先課題としていることを非常に心強く感じると述べた。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、中国地域は、ものづくりに強みを持っており、そうした地域の個性を活かして、製造業を中心とした付加価値の高い産業の集積を図り、雇用吸収力を高め、地域全体のさらなる発展の基盤を固めてほしいと語った。また、今年1月に発表した新ビジョン「希望の国、日本」の概要を紹介。同ビジョンで特に強調している道州制は、一定の人口、面積、産業の集積や大学などの知的拠点を備えた「広域経済圏」をつくることで、それぞれの地域が自立的に発展・成長していくことが可能となるという発想に基づくものであり、わが国の統治機構のあり方を根本から変革する究極の構造改革として、地域経済の自立と活性化につながると述べた。

■活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連から、宮原副会長が、M&A法制全般の見直しを中心とした経済法制に関する取り組み、米倉副会長が、より包括的で質の高い経済連携協定(EPA)の推進に向けた取り組み、渡副会長が、輸出入・港湾手続きをはじめ貿易諸制度の抜本的改革に向けた取り組みについてそれぞれ報告した。

一方、中国経連からは岡彬副会長が「新産業・新事業創出に向けた産学官連携活動」について報告。中国経連として今年度は、(1)理工系の高度先端分野に主体を置いた連携活動をさらに農業、福祉など地域特性にあった分野にも拡げる「幅広い分野を巻き込む連携の裾野拡大」(2)金融機関の持つ取引先企業との広範なネットワーク機能を活用し、取引先企業の抱える課題・要望などの解決に大学の知を活用する「金融機関と連携した活動の推進」(3)イノベーション創出の加速化を目的とした「産学官ネットワークの強化と人材育成」――の3点に重点的に取り組んでいると述べた。
次に丸磐根副会長が「地域の競争力強化に向けた道路・港湾整備への取り組み」について報告。中国地域においては高速道路網の整備がいまだ十分ではなく、特に山陰自動車道の整備が大きく遅れており、地域、ブロック間の格差是正を図る上からも、その整備は不可欠であると述べるとともに、港湾整備に関しては昨年、中国地方整備局、中国運輸局と共同で「中国地方国際物流戦略チーム」を設置、中国経連の福田会長を本部長として、港湾をはじめとする充実した国際物流機能の提供によって地域の産業競争力を向上させることを主眼に置いて検討を重ねていると説明した。
続いて高橋正副会長が「ものづくり人材育成」について報告、グローバル化の中での本格的な地域間競争に生き残っていく上で、ものづくりを支える人材育成が喫緊の課題であり、ものづくりにおける教育論から技術・方法論に至るまでリーダーに期待される指導力の涵養を目的とする「ものづくり人材育成研究会」を昨年発足させ、ものづくりの重要性の再認識や地域としての課題の共有化を図るなど、さまざまな取り組みを進めていると述べた。

観光振興や道州制導入など

■自由討議

第2部の自由討議では、中国経連から、(1)ビジット・ジャパン・キャンペーンや産業観光推進の取り組みなどの観光振興(今中亘瀬戸内海委員会副委員長)(2)スリムで効率的な行政などが期待される道州制の導入による企業活動への影響(大田哲哉常任理事)(3)ICTに関わる技術革新とその利活用促進へ向けて求められる企業、地域などの取り組み(橋本渉常任理事)(4)労働力人口の減少に対応し、仕事と家庭の両立、多様な働き方の提供が課題となる中での企業における少子化対策(安部研一瀬戸内海委員会副委員長)(5)イノベーションや生産の効率化に向け、さらなる進展が要請される規制改革の推進(橋本宗利常任理事)――などについて日本経団連の考え方や取り組みに関する質問があった。
これに対して日本経団連は、(1)観光立国推進基本計画の下で、ビジット・ジャパン・キャンペーンをはじめとする観光政策が着実に実施されるよう働き掛けていく。産業観光は、伝統とハイテクというわが国の強みを直接体験できる教育の場としても活用可能(江頭副会長)(2)道州制導入により、各行政体の政策遂行能力が向上し、地域の実態を踏まえた政策がタイムリーに打たれ、地域としての競争力も強化され、企業の事業活動にも好影響が及ぶ(江頭副会長)(3)わが国がICT分野における世界のフロントランナーとなるための基盤は、高度ICT人材の育成にあり、高度なICT教育推進を大学に呼び掛け、モデルの確立を進めている(米倉副会長)(4)経営トップ自らがワーク・ライフ・バランスの必要性を理解し、働き方の多様な選択肢の整備や仕事と生活を両立しやすい職場の雰囲気の醸成に努める必要がある(渡副会長)(5)今年1月発足した政府の規制改革会議の活動を支援し、同会議の答申に経済界の意見が反映されるように緊密な連携を取っていく(宮原副会長)――と応えた。

最後に懇談会を総括して御手洗会長は、「各地域に核となる企業を生み出して広域経済圏を創り出すことができれば、地域社会に雇用を生み、人々の生活を豊かにしていくことができるはずである。私の思い描く道州制は、こういう視点を出発点としている」と述べるとともに、中国地域には「ものづくりを得意とする企業群が集積しており、現在取り組まれている産学官連携によるイノベーション創出の試み、人材育成などさまざまな取り組みを結実させることで、豊かな広域経済圏をつくっていくことは十分に可能であり、世界を視野に入れ、グローバル競争に立ち向かう気概を持ち続けてほしい」との期待を示した。

【総務本部総務担当】
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