日本経団連タイムス No.2856 (2007年4月19日)

ハットン英国雇用年金相と懇談

−高齢者・若年者雇用など共通の課題で意見交換


日本経団連は12日、東京・大手町の経団連会館で訪日中の英国ジョン・ハットン雇用年金大臣、グレアム・フライ駐日英国大使らと高齢者や若年者の就労促進等、日英両国に共通する雇用・労働問題をテーマに懇談を行った。日本経団連からは、西室泰三評議員会議長、岡村正副会長、鈴木正一郎雇用委員長、加藤丈夫労使関係委員長らが出席した。

懇談の冒頭、西室評議員会議長から、日本では少子化・高齢化に伴う労働力供給の減少を背景に、雇用については高齢者や若年者などの就労促進が課題となっており、また社会保障については年金・介護・医療と3年連続して制度改革が行われたが、まだ制度の持続可能性に課題を残していることを紹介した。

これに対しハットン大臣は、英国でもニートなど若年者の雇用問題を抱えており、就労意識を高めることなどを意図して義務教育終了年齢の16歳から18歳への引き上げを検討していること、1999年に雇用における年齢差別禁止をうたう行動規範が策定されて以来高齢者の就労促進が進んでいること、またこれまで労働市場に参画してこなかったシングルマザーや、疾病手当給付者などの就労促進も進めていることなどを強調した。さらに年金問題については、国家財政の健全性維持を目標として、国民に老後に備えた貯蓄を行うよう奨励し、また現在企業年金を持たない企業が3割ある中、職域年金の創設を義務化することや、国の年金の支給開始年齢を40年かけて65歳から68歳に引き上げることなどを検討していると述べた。

岡村副会長は、高年齢者雇用安定法改正により継続雇用制度の導入などが義務化されたが、60歳以降もフルタイムで働きたいという希望者は必ずしも多くなく、いまだ制度が十分機能しているとは言えない現状を指摘するとともに、労働力の多様性確保という観点から、女性、障害者、外国人などの活用を一層進めるべきであると主張した。

また若年者の雇用については、加藤労使関係委員長が、学生のうちから職業意識を醸成することが重要であり、インターンシップを制度化するとともに、税制等の面から政府は企業を支援すべきであるとの見解を示した。

ハットン大臣から日本の職業紹介について質問があり、これに回答した鈴木雇用委員長は、現在は公共部門が独占して行っているが、民間にできる分野は民間に開放すべきであり、官と民との協力が必要であると強調、他方で若年者の離職率が高まる中、若者に対する職業意識についての教育の重要性が増していると主張した。

【労政第二本部国際労働担当】
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