日本経団連タイムス No.2858 (2007年5月10日)

フォーラム「『京都議定書』目標達成に向けて−みんなで止めよう温暖化−」を開催

−産業界・国民・政府一体の取り組みを


経済広報センターは4月18日、東京・大手町の経団連会館においてフォーラム「『京都議定書』目標達成に向けて―みんなで止めよう温暖化―」を日本経団連の後援で開催。国会議員、大使館関係者、報道関係者、生活者、企業関係者など約230名が参加した。御手洗冨士夫会長の開会あいさつに続き、「京都議定書」目標をいかに達成するかという観点から、松橋隆治・東京大学大学院新領域創成科学研究科教授による基調講演と産業界、生活者、有識者によるパネルディスカッションが行われた。司会はフリーキャスターの林美香子氏。

御手洗会長はあいさつで、日本における「京都議定書」の目標達成のためには家庭部門と業務部門における抜本的な対策が必要であるとし、産業界のみならず国民と政府が一体となった取り組みの必要性を訴えた。
また、「ポスト京都議定書」の仕組みは、すべての主要排出国が参加する国際枠組みとすることが不可欠であり、衡平でエネルギー効率の向上に結び付く仕組みが求められていると強調した。さらに、環境問題においてもイノベーションが経済成長とCO2削減を両立させるかぎであると訴えたほか、CO2削減の観点から重要な原子力発電については、不祥事の再発防止によって信頼を回復してほしいと述べた。

続く基調講演で松橋教授は、最近の研究結果を引用しながら地球温暖化が人為的な現象であり、気温上昇とともにそのリスクも増加するという見解が強まっていることを示すとともに、日本の「京都議定書目標達成計画」(2005年4月閣議決定)の進捗と、現在進行中のその評価と見直し作業について紹介した。
また、「ポスト京都議定書」の枠組みとして国際的に議論されている提案を解説し、その中で日本の産業界が推すセクトラルアプローチ(個々の技術や製品に排出量やエネルギー効率の基準を設定し、CO2の排出を削減する方式)は最も有効であり、国際的に提言していく必要があると訴えた。

続いて、松橋教授のほか、松下電器産業の菅野伸和環境渉外・企画担当部長、本田技研工業の水戸部啓一経営企画部部長・環境安全企画室室長、セブン&アイ・ホールディングスの山口秀和総務部環境推進シニアオフィサー、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の秋庭悦子常任理事・東日本支部長らによるパネルディスカッションを行った。
まず菅野、水戸部、山口の3氏が各企業や業界におけるCO2削減努力と成果について発表を行い、次に秋庭氏が思うようにCO2削減が進まない民生部門の難しさを語った。その中で家庭での省エネのためには、CO2排出の「見える化」と省エネを実行する人が得をするような仕組みづくりを行うべきとの提案があった。
これに対し、家庭における今後の省エネの方策について、山口氏は四季の変化に対応したエコショッピング、水戸部氏はエコドライブ、菅野氏は家電製品における省エネツールなどそれぞれアドバイスを行った。秋庭氏は各業界別に容器包装の軽減や、街づくりの観点も入れたエコドライブ、省エネ家電のPRと、さらなる努力を要請した。
また、今後の省エネの展望については、菅野氏が国内省エネ製品CDM(クリーン開発メカニズム)のような制度の導入、水戸部氏が自動車メーカーと生活者、行政が一体となった取り組み、山口氏が店舗における管理の徹底による一層の省エネを提言した。秋庭氏は、今後の生活者の店舗・商品選択の基準として、企業の地球環境への取り組みを考慮する必要を訴えた。

最後に松橋教授が、企業は環境への取り組みが業績向上に結びつくという信念を持ち、生活者はライフスタイルに応じた環境への貢献をしてほしいと呼び掛けて、2時間にわたるフォーラムを終了した。

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