日本経団連タイムス No.2862 (2007年6月7日)

シンポジウム「温暖化対策と成長戦略」開催

−駐日英国大使館と共催


日本経団連は5月22日、東京・大手町の経団連会館において駐日英国大使館との共催で、シンポジウム「温暖化対策と成長戦略」を400名あまりの参加を得て開催した。当日は御手洗冨士夫日本経団連会長、マーガレット・ベケット英国外務大臣のあいさつに引き続き、張富士夫トヨタ自動車会長、デイビッド・コックス・テスコ取締役、猪野博行東京電力常務取締役、デイビッド・ライト・バークレイズキャピタル副会長、大鶴英嗣松下電器産業取締役、ジョン・ウェルズBP環境担当ヴァイス・プレジデントが各企業の温暖化防止に向けた取り組みを紹介した。御手洗会長とベケット外務大臣のあいさつの要旨は次のとおり。

挨拶の要旨

<御手洗会長>

気候変動問題は地球規模での対応が必要な最重要課題の1つとして議論が高まっているが、現行の「京都議定書」には、米国、中国、インドなどの主要排出国が参加していない、あるいは削減義務を負っていない等の問題がある。

温暖化防止にとって重要なことは、あらゆる国と地域において、個人を含むすべての経済主体が、それぞれの役割を認識し、省エネや温室効果ガスの排出削減を実践することであり、企業としても積極的に取り組んでいく必要がある。

気候変動対策について、一律に適用できる万能策はない。排出権取引をはじめ、世界各地でさまざまな手法が試みられているが、重要なのは、各国の実情に応じて最適な対策を自ら選択することである。わが国では産業界が「環境自主行動計画」の下、6年連続で目標を達成している。

また、温暖化対策においてカギとなるのは、技術革新である。先般開催された「G8ビジネス・サミット」の場でも、成長と環境保護の両立の観点から、環境効率を改善する技術の推進が焦点となった。わが国企業は、石油ショック以来の絶え間ない技術革新の結果、世界に冠たる省エネ、CO2排出削減を達成しているが、これに満足せず、技術開発・普及の一層の促進に努める所存である。

本日は、日英両国を代表する企業の取り組みを紹介いただくが、産業界のノウハウを活かした枠組みの下でこそ、持続可能な社会が実現すると確信している。

<ベケット外務大臣>

低炭素社会の実現、エネルギー効率の向上は地球温暖化の脅威を克服するカギを握ると同時に、競争力を維持していく唯一の方法であり、日英がこの分野で協力していくことが重要である。

日本で最も成功を収めているイニシアチブの1つに、トップランナー方式がある。最もエネルギー効率の良い機器・製品がトップランナーとみなされ、他のメーカーが改善に挑むというシステムは、シンプルではあるが効果的である。日英が世界の温室効果ガス排出のごく一部しか占めないにもかかわらず、その削減に大きな責任を負っているのは、まさに両国がトップランナーだからである。われわれは「あなたの国がもっと削減するなら、私の国も削減に努めましょう」と言うことはできない。逆に日英が削減のペースを維持し、プレッシャーをかけ続ければ他国はついてくる。

日本の産業界は日本を世界で最もエネルギー効率の高い先進経済大国へと導いてきた。今後、気候変動政策に関するさらなるイニシアチブに期待している。

【産業第三本部環境担当】
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