日本経団連タイムス No.2863 (2007年6月14日)

第2回高度情報通信人材育成に関する産学官連携会議を開催

−高度情報通信人材育成の成果を産学官が報告


日本経団連は5月22日、東京・大手町の経団連会館で、「第2回高度情報通信人材育成に関する産学官連携会議」を開催した。同会議では、産学官の関係者180名が参加し、成果が上がりつつある産学官の取り組みについて情報を共有するとともに、欧州・インドにおける高度情報通信人材育成の先進事例や今後取り組むべき課題等について理解を深めた。

日本経団連では、提言「産学官連携による高度情報通信人材の育成強化に向けて」(2005年6月)の実現に向け、同年12月に「第1回高度情報通信人材育成に関する産学官連携会議」を開催。高度情報通信人材育成に向けた産学官連携体制の構築、および産業界の求める人材像や教育のあり方の提示、世界水準の高度情報通信人材育成コースの立ち上げに向けた協力大学の募集等を行った。そして今年4月から筑波大学、九州大学の大学院修士課程において産業界のニーズを踏まえた新コースが開設されるなど、具体的な成果が上がってきている。

会議では、まず主催者を代表して榊原定征情報通信委員会共同委員長と山下徹高度情報通信人材育成部会長からあいさつがあった。引き続き、産業界を代表して岩野和生高度情報通信人材育成部会・拠点支援プロジェクトチーム座長が現在の取り組み状況を報告。産業界の支援体制および企業からの教員派遣、企業奨学金の設立、インターンシップの受け入れ準備など、具体的な支援内容を紹介した。さらに「新コース開講により、わが国でも高度情報通信人材教育の分野に大きな潮流が生まれた」と強調した。

協力大学の代表としては筑波大学、九州大学、東海大学、立命館大学から、開講中の高度情報通信人材育成カリキュラムの内容について個別説明があった。いずれの大学においても優秀な学生を定員以上確保するとともに、企業と連携して実践的かつ先進的カリキュラムを開始、学生からも好評であるとの報告があった。

政府からは、内閣官房、文部科学省、経済産業省、総務省から、それぞれ高度情報通信人材育成に向けた施策の進捗報告があった。各府省とも、現在の取り組みの一層の発展に向けた具体的施策を打ち出すとともに、産学官の連携が重要であるとの認識を改めて示した。特に、総務省からは、ICT国際競争力プログラムにおいて、高度情報通信人材のナショナルセンター的機能を有する専門職大学院設立の検討等の具体的提案もなされた。

海外先進事例の報告では、山下部会長から、3月にアイルランド、フィンランド、ドイツの欧州3カ国に派遣した調査ミッションの報告、および横浜マッキンゼー・アンド・カンパニープリンシパルから、インドにおける高度情報通信人材育成の取り組みが紹介された。

欧州3カ国においては、PBL(プロジェクトを中心とした実践教育)を教育の中核に据え、高い教育効果を得るとともに、産学の連携も盛んに行われている。また、インドでは一部のエリート大学を除いて制度が硬直的であるため、インフォシス等の有力IT企業が自ら人材育成プログラムを大学に提供しているとの説明があった。

これまでの成果をアピールする一方、「高度情報通信人材育成の取り組みをいかにして持続可能な循環サイクルに乗せ、かつ日本全国の大学へと規模を拡大していくかが今後の課題」との意見も、会議全般を通じて聞かれた。

最後に、山下部会長から、「高度情報通信人材育成に関して今後一層の連携強化を図る上で、企業、大学、政府が本会議で認識を共有できたことは誠に有意義であった」とのコメントがあった。

【産業第二本部情報通信担当】
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