日本経団連タイムス No.2865 (2007年6月28日)

関西会員懇談会を開催

−「創造的改革を推進し、社会と未来への責任を果たす」テーマに/関西の競争力強化策などを探る


日本経団連は13日、大阪市内のホテルで関西地区の会員企業代表約300名を集め、関西会員懇談会を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長、渡文明副会長、中村邦夫副会長、森田富治郎副会長、槍田松瑩副会長、榊原定征副会長、前田晃伸副会長、古川一夫副会長、奥田務評議員会副議長が出席し、「創造的改革を推進し、社会と未来への責任を果たす」をテーマに会員代表との間で意見交換を行った。

冒頭のあいさつで、御手洗会長は、人口減少社会が到来する中、国民の将来不安を払拭するためにわが国がとるべき道は、世界に目を向けた「成長路線」であると指摘。民間活力の活用により、成長の持続可能性を確保していく必要があると強調した。そのために財政、社会保障、教育、雇用問題などの諸課題に取り組んでいくと述べた。また、地域の特色を生かしつつ、自らの責任と権限の下に広域経済圏を創出することが日本全体の活力の向上につながると指摘し、道州制の導入について、積極的な姿勢を示した。

活動報告

続いて、日本経団連の最近の活動のうち、まず、「規制改革要望の取りまとめ」に関連し、前田副会長から、引き続き簡素で効率的な政府の実現を求めていくと報告した。次に、榊原副会長が、「科学技術によるイノベーション創出」のため、(1)政府の研究開発成果の社会への還元(2)理工系博士人材の育成・活用(3)科学技術予算の一層の拡充を求めていくと説明した。また、古川副会長は、「世界最先端のICT国家の構築」に向けて、(1)世界最先端の電子行政の実現(2)高度情報通信人材の育成(3)安心・安全なインターネット社会の構築に取り組んでいることを報告した。

意見交換

意見交換では、まず、下妻博住友金属工業会長から、関西の競争力強化に向けて、関西国際空港の整備を含む、陸海空一体の国際物流ネットワーク強化と次世代スーパーコンピューターの整備・活用に取り組んでいるとの説明があった。次に森下俊三西日本電信電話社長から、地方自立のために、税源と権限の移譲をセットで考えることが重要であるとの指摘があり、道州制に強い期待が示された。山口昌紀近畿日本鉄道社長は、関西がアジアのゲートウェイとなるため、平安遷都1300年記念事業や歴史街道推進事業などの歴史、文化を生かした観光振興を進め、新しい日本の中枢をめざしたいと説明した。小谷茂雄グンゼ会長は、現在のアジアとの共生をさらに発展させるため、各国とのFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)の加速化が重要であると述べた。秋山寛ジーエス・ユアサコーポレーション会長は、同社が環境保全の観点から、リチウムイオン電池をはじめ、CO2を排出しない電源の開発を進めていることを紹介し、わが国の環境技術の国際競争力向上に役立てたいと述べた。最後に佐藤博之ダイビル社長が、関西の再開発に当たっては、開発インセンティブの付与とともに地域住民やテナントへの配慮が必要であると指摘した。また、投資ファンドや外資による行き過ぎたM&Aの防止のための措置が必要であるとの指摘があった。

これらの意見に対し、森田副会長が、関空の第2滑走路オープンをてこにして、関西がアジアのゲートウェイとして飛躍することの期待を示した。また、港湾のワンストップサービス実現やボトルネック解消のための道路整備の重要性を指摘した。中村副会長は、道州制導入のためには、地方分権改革や国・地方を通じた行財政改革など「究極の構造改革」を進める必要があると指摘し、担当委員会で具体的な検討を進めると表明した。また、道州制に関する国民的議論の喚起と理解の促進が重要と述べた。渡副会長は、国際観光の推進は魅力ある国・地域づくりにつながる重要な施策であると指摘し、歴史、伝統に加えて新しい文化を取り入れ、観光客誘致を進めることや広域的な観光振興を進め、世界にPRすることが有効であると述べた。一方、社会構造の変化に対応するため、都市再生を戦略的に推進するとともに地域の特性を生かした再開発を全国に広げることが急務であると述べた。また、M&Aについては、特に外資の動きを注視し、法整備に取り組みたいと述べた。槍田副会長は、わが国が持続的な成長を遂げるためには、アジアのダイナミズムを取り入れていくことが不可欠なため、EPAネットワークの拡大、特にASEAN全体とのEPA早期締結が必要だと述べた。

さらに、奥田評議員会副議長は、環境への取り組みは企業活動の必須要件であると強調。また、京都議定書の目標達成のため短絡的に環境税の導入やキャップ・アンド・トレードによる排出権取引が行われることがないよう働き掛ける必要があると指摘した。2013年以降の新枠組みについては、米国、中国、インドなど主要排出国が参加できるよう各国の実情に応じた柔軟で多様な対策が重要と述べた。

最後に、御手洗会長は、懇談会を総括した後、社会保険庁の年金納付記録問題に触れ、公的年金に対する国民の安心と信頼を回復するため、官民が一丸となって問題解決に取り組む必要を強調し、会員に人員派遣等の協力を要請すると述べた。

【総務本部総務担当】
Copyright © Nippon Keidanren