日本経団連タイムス No.2865 (2007年6月28日)

雇用委員会を開催

−「成長力底上げ戦略」/山崎・内閣府大臣官房審議官から説明聴取


日本経団連は13日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(鈴木正一郎委員長)を開催し、「成長力底上げ戦略」について、山崎史郎内閣府大臣官房審議官から説明を聴取した。説明の概要は次のとおり。

自ら向上に取り組める機会拡大

1、基本的な姿勢

「成長力底上げ戦略」は、成長戦略の一環として、経済成長を下支えする基盤の向上を図ることにより、働く人全体の所得・生活水準を引き上げつつ、格差の固定化を防ぐものである。
同戦略は、結果平等ではなく、意欲のある人や企業が自らの向上に取り組める機会を最大限拡大することにより、底上げを図ることをめざしている。
戦略の柱として、「人材能力戦略」「就労支援戦略」「中小企業底上げ戦略」を3本の矢として掲げ、人材投資を中心に据えている。

2、人材能力戦略

フリーターや新卒者等職業能力形成機会に恵まれない者に対し、職業訓練の機会を提供する。
そのための取り組みとして、「職業能力形成システム」(通称ジョブ・カード制度)の構築を検討中である。
同システムは、職業訓練とその評価・公証をワンパッケージとした英国のNVQ(National Vocational Qualification)を参考にしている。
雇用型あるいは委託型による、企業でのOJTを中心とし、その参加者に対して、訓練状況や実績評価認定結果等を記載したジョブ・カードを交付し、求職活動に役立てることをめざしている。
また、参加者や参加企業等に対する経済的支援、キャリア・コンサルティングの拡充等も検討中である。
なお、同システムは、2008年度からの本格実施をめざし、官民からなるジョブ・カード構想委員会において具体策の検討ならびに、先行的プロジェクトの実施を進める。

3、就労支援戦略

「福祉から雇用へ」推進5か年計画を策定し、5年後の具体的目標を設定した上で、福祉を受けている人の就労を促進する。
そのためには、福祉と雇用が一体となった取り組みが必要であり、特にハローワークを中心としたチーム支援を全国で展開する。
また、授産施設等で福祉的就労をしている障害者の工賃の引き上げに向け、産業界等の協力を得ながら、官民一体となった取り組みを推進していく。

4、中小企業底上げ戦略

生産性向上と最低賃金の引き上げに向けて、産業政策と雇用政策の一体運用を行う。
具体的取り組みとして、生産性向上については、(1)下請取引の適正化(2)生産性向上特別指導員による経営改善やIT導入のためのコンサルティング――を行う予定である。一方最低賃金については、その周知徹底を図るとともに、生活保護との整合性を考慮した最低賃金法の改正をめざしている。

5、推進体制

政労使が参加する「成長力底上げ戦略推進円卓会議」を設置した。既に2回開催し、基本構想、各戦略の07年度実施計画、08年度以降の実施方針について議論した。7月上旬開催予定の第3回会合では、生産性向上と最低賃金の中長期的な引き上げ方針について議論する予定である。
また、各地域の実情に即した実効ある取り組みがなされるよう、地方レベルでの円卓会議も順次開催中である。

【労政第一本部雇用管理担当】
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