日本経団連タイムス No.2865 (2007年6月28日)

第2期日本経団連グリーンフォーラム 6月講座を開催

−「キャリアデザインの方法」学ぶ


「プロフェッショナルのコアスキルを学ぶ」を総合テーマとして開講した第2期日本経団連グリーンフォーラムは、22日に都内で6月講座を開催した。今回は、講師に、同フォーラムのアドバイザーでもある大久保幸夫リクルートワークス研究所所長を迎え、「キャリアデザインの方法」について学んだ。

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講座は2部構成で行われた。大久保講師は、前半の講義の中でまず、ここで取り上げるキャリアとは、職務経歴書に書くような、経験した職業・職務の履歴(客観的キャリア)ではなく、仕事に対する自己イメージ(主観的キャリア)のことであると定義付けた上で、受講者の年代層においてキャリアを考えることによって、会社と個人の対等な関係(Win−Winの関係)を実現し、仕事へのモチベーションの向上を図り、より納得感のある職業生活を送ることができるようになる、と述べた。

次いで、ビジネスマンのキャリアデザインの考え方として、20〜30代にかけては、ゴールを設定せずに当面の仕事の目標に向けて全力で取り組む「いかだ下り型」で基礎力を蓄え、経験を積みながら自身の専門分野の方向性を見いだしていくという段階を経て、今度は「山登り型」でその選択した専門分野でプロとしての実力と実績を積み重ねていき、その道のトッププロとしての地位を築いていく段階があることを指摘。およそ管理職になる30代半ばは、この「いかだ下り」から「山登り」への移行期であり、この移行をスムーズに行うことがキャリアを成功に導くことになる、と強調した。また、プロとは、課業の専門化を進め、1〜2年で一人前となる「スペシャリスト」とは異なり、個人の専門化を進め、10〜20年で一人前となり、以後も自己管理をしつつ際限のない深化・成長を続ける「プロフェッショナル」(Adaptive Expert)のことであると解説。プロフェッショナルのコースは、(1)経営を担うビジネスリーダー型(2)変革・創造を担うプロデューサー型(3)特定技術を担うエキスパート型――の3種類に分類され、中でも、ファイナンシャル知識を持った”経営のプロ”である「ビジネスリーダー」に対するニーズが高まっていると指摘した。

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後半では、自身の職業能力をどう高めるか、そのためにどう学習するか、を中心に学んだ。

ここではまず、プロフェッショナルの成長段階として、茶道、武士道等すべての道に共通する「守(型を習得する、プロへの入り口)」→「破(プロの段階)」→「離(型を超越した名人)」のプロセスを紹介。型の上に独自の方法を加え、評価される「破」が、めざすべきプロのステージであり、「離」とは、さらにより高次の使命を持ち、職業全体の倫理を担う、組織のシンボル的存在であると述べた。

次いで大久保講師は、職業能力の構造について、詳しく解説した。それによると、広義の職業能力は、狭義の職業能力と態度(意欲、スタンス、価値観など)から成り、狭義の職業能力は基礎力と専門力から成る。中でも、あらゆる仕事に共通して必要な能力である「基礎力」の向上を図ることが重要と強調。基礎力の構成要素である、(1)対人能力(親和力・協働力・統率力)(2)対自己能力(感情制御力・自信創出力・行動持続力)(3)対課題能力(課題発見力・計画立案力・実践力)――のそれぞれについて、チェックリストを用いて、自分自身の「振り返り」を行うよう促した。

最後に、大久保講師は、ミドルエイジからの学習とは、(1)深く考える習慣を持つ(他人がつくった知識を「吸収する学習」から、「考える学習」への転換)(2)中身のある話をする(「話す方法」から、「話す内容」への転換)(3)先人の知に新たな一行をつけ足す(「知識の消費者」から「知識の生産者」への転換)――であるとして、本を閉じて考えてみること、体系的に1人で話す訓練をすること、意識して「書く」機会をつくることなどを受講者に勧め、講義を締めくくった。

【事業サービス本部研修担当】
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