日本経団連タイムス No.2867 (2007年7月12日)

地球温暖化問題に関するセミナー「ポスト京都議定書の枠組と産業界の役割」を開催

−WBCSDの協力を得て


講演やパネル討論など展開

日本経団連は6月28日、東京・大手町の経団連会館でWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の協力を得て、地球温暖化問題に関するセミナー「ポスト京都議定書の枠組と産業界の役割」を開催した。当日は会員企業、政界、官界等から350名余りの出席の下、豊田章一郎日本経団連名誉会長(WBCSD副会長)による開会あいさつ、スティグソンWBCSD事務総長、松橋隆治東京大学大学院教授による基調講演に引き続き、鮫島章男日本経団連環境安全委員会共同委員長、桝本晃章東京電力顧問の参加も得て「ポスト京都枠組における産業界の役割」についてパネルディスカッションを行った。

開会あいさつで豊田名誉会長は、WBCSDが公表している「エネルギーと気候変動問題」に関する3部の報告書について紹介。(1)2004年発表の "Facts & Trends to 2050" では、エネルギー消費に関する現状把握と2050年に向けた予測を提示(2)05年発表の "Pathways to 2050" では、2050年に向けたCO削減のあるべき道筋を提示(3)今回発表された "Policy Directions to 2050" では、前作で提示された道筋を実現するのに必要な政策提言を行っている――と説明した。特に、排出権取引だけではなく、技術開発の促進や適切な基準・目標の設定等、さまざまな方法が持続可能な発展を促すことがうたわれている点は注目に値すると述べた。また、 "Policy Directions to 2050" でうたわれている基本的考え方は、6月上旬にドイツ・ハイリゲンダムで行われたG8サミットにおいて合意された気候変動に関する認識とも一致する部分が多いと評価した。
その上で、産業界としても、2013年以降の国際枠組みが実効あるCO削減につながるよう、理解活動を一層進めていきたいと述べた。

続いて行われた講演の中で、スティグソンWBCSD事務総長は、温暖化の防止に向け、産業界はエネルギー効率性の向上、ベスト・プラクティスの普及、早急な技術革新に努めなければならないと指摘。特に自動車セクターについては、ハイブリッド自動車の普及や公共交通の充実が重要であり、製造業については技術支援を通じた途上国における温室効果ガスの排出削減がカギを握るとの考えを示した。
その上で、WBCSDとしては環境と経済成長の両立を図るべく、産業界と共に各国政府に提言を行っていくと発言した。

松橋東京大学大学院教授は、温室効果ガスの排出削減に当たっては、セクター別のボトム・アップ方式が有効であると指摘。各国が自主的に設定した目標(原単位ベース)を、必要に応じて技術支援を受けながら達成していくということであれば、法的拘束力の面で問題を残すものの、途上国にとって受け入れやすいものとなるとの考えを示した。
セクターとしては電力、鉄鋼、アルミ、石油精製、セメント等、データの収集が比較的容易で、製品の同一性が高く、国際貿易が盛んな分野が適していると述べた。

【産業第三本部環境担当】
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