日本経団連タイムス No.2868 (2007年7月19日)

宇宙開発利用推進委員会総会を開催

−07年度事業計画など審議


日本経団連は4日、東京・大手町の経団連会館において、宇宙開発利用推進委員会(谷口一郎委員長)の総会を開催した。同総会では、2006年度の事業報告と収支決算、07年度の事業計画と収支予算、役員の一部改選、ならびに5月から検討してきた提言案について審議した。議件審議終了後、ノンフィクション作家の松浦晋也氏から講演を聴取した。

06年度の事業報告については、「わが国の宇宙開発利用推進に向けた提言」の取りまとめ、宇宙基本法に関する自民党・公明党への産業界の意見表明、07年度予算編成に関する関係方面への働き掛け、「宇宙開発に関する長期計画」を検討している宇宙開発委員会計画部会における谷口委員長の意見表明、会報「宇宙」第55号「宇宙外交」の出版等が報告された。

続いて、07年度事業計画についての説明があった。宇宙関連予算が低迷し、宇宙産業にとって厳しい状況が続く中、衛星測位の利活用推進等を目的とする「地理空間情報活用推進基本法」が5月に成立し、6月には「宇宙基本法案」が国会に提出されるなど、わが国の宇宙開発利用に関して明るい兆しが見え始めている。そのような状況を踏まえ、宇宙開発利用推進委員会は今年度、(1)宇宙の産業化促進のための環境整備(2)国際交流(3)広報・調査――の3つを推進することとしている。

具体的内容としては、(1)第3期科学技術基本計画で国家基幹技術や戦略重点科学技術に選定されたプロジェクトの着実な推進の働き掛け(2)総合的な国家戦略としての宇宙開発利用の重要性を明確にし、宇宙産業の国際競争力強化、宇宙の安全保障への活用など、わが国の推進体制整備の抜本的変革を図る宇宙基本法の早期制定の働き掛け(3)それらに関する産業界の提言取りまとめ(4)準天頂衛星システム(日本版GPS)推進に向けた関係者の連携強化・普及啓発(5)訪日関係者との意見交換(6)会報「宇宙」の出版――等を実施する。

役員の一部改選については、委員長および副委員長を再任した。

提言案の審議では、5月から企画部会と宇宙利用部会で検討してきた案について審議を行い、おおむね了承され、最終的な取り扱いは委員長に一任された。提言案は7月9日の日本経団連会長・副会長会議における審議を経て、17日の理事会で承認を得た後、直ちに政府・与党の関係者に建議された。(関連記事

議件審議終了後にはノンフィクション作家の松浦晋也氏から「日本宇宙ビジネス離陸のために」とのテーマで講演を聴取した。
松浦氏はまず、情報収集衛星導入が宇宙予算全体の拡大につながらず、既存の宇宙プロジェクトの延期が相次いだことを例に挙げ、わが国の縦割り予算構造の弊害を述べた上で、宇宙の有用性をユーザー官庁に理解させ、行政の各分野で宇宙を使うことによって宇宙予算増加につなげる必要があると説明した。また、宇宙に関する国民的支持を得るため、米国の追随ではなく、小惑星探査機「はやぶさ」のように、既成概念の延長線上ではない、わが国独自の技術とアイデアで、世界初となるプロジェクトを実施すべきと提案した。その際、有人であるか無人であるかは重要でなく、国民が感情移入できるものとする必要があるという指摘も併せて行った。
最後に、企業・産業界だけの利益ではなく、国民および全世界を考えた宇宙戦略を考えることで、わが国の宇宙開発利用の未来を切り拓くことができるとのメッセージを示した。

【産業第二本部宇宙担当】
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