日本経団連タイムス No.2868 (2007年7月19日)

「グローバル・イノベーション・エコシステム2007」を開催

−躍動する世界を目指して


日本経団連は6月29日、東京・大手町の経団連会館で、内閣府、日本学術会議、GIES2007組織委員会と共催で、国際シンポジウム「グローバル・イノベーション・エコシステム2007―躍動する世界を目指して」(GIES2007)を開催、国内外から約500名が参加した。

シンポジウムではまず、主催者を代表して、平沢勝栄内閣府副大臣、榊原定征日本経団連副会長があいさつ。平沢副大臣は、「わが国が力強く成長し、国民一人ひとりが豊かで、安全・安心な生活を享受するとともに、世界の諸課題に貢献していくためには、新たな活力をもたらすイノベーションの創出が不可欠である。今回の会合では、わが国のイノベーションに関する最新の施策や諸外国の取り組みを踏まえ、躍動する世界と持続可能な社会の構築をめざしたイノベーションをグローバルに展開するためには何が必要で、日本の果たすべき役割は何かを議論し、解決策を求めていくことを目的にしている。ぜひ実効性のある政策提案に結び付けてほしい」と述べた。

一方、榊原副会長は、「成長力を維持・強化し、豊かな社会を実現していくためには、長期的な視点に立った新しい価値の創造が不可欠である。とりわけ資源の乏しいわが国にとっては、イノベーションの推進と知的財産の保護・活用が喫緊の課題である。同時に、われわれがめざす持続的成長は、環境との両立が必須条件であり、わが国が取り組んできたイノベーションの成果であるさまざまな環境技術で世界に貢献していくことが求められる。さまざまな国家、地域、都市が競争かつ協力しながら共生し、さまざまなプレーヤーが補い合って課題を解決する社会システム『グローバル・イノベーション・エコシステム』の実現のためにどのような方策が必要なのか、有益な議論が行われることを期待している」と語った。

主催者あいさつに続き、「イノベーション推進に対する日本の取り組みと世界的な課題解決に向けた各国・地域の役割」を基本テーマに、内閣特別顧問であり、政府のイノベーション25戦略会議・座長を務める黒川清氏とデボラ・L・ウィンス・スミス米競争力評議会会長がそれぞれ基調講演を行った。「イノベーション25」とこれからの日本と世界について説明した黒川氏は、「世界がどこを向いているかを常に意識しながら行動し、考えながら社会を変革していくことが大事である。イノベーションとは常に変化を求める気持ちと行動であり、“出る杭を育てる”という発想が必要である」と指摘した。また、スミス氏は米国で行われているイノベーション政策や活動状況、課題について説明。「グローバル経済の中で、持続可能な競争優位性はイノベーションによってのみ成立し得る。情報と技術を融合させることによってグローバル課題にいかに立ち向かっていけるかがカギとなる」と述べた。

続いて、日本学術会議イノベーション推進検討委員会副委員長の北澤宏一氏が「日本のイノベーション政策の動向―社会的価値から経済活動への翻訳」と題して講演。北澤氏は「日本におけるイノベーションの指標は便利さの追求であり“いま”の視点であったが、これからは、こころ、生きがいを追求し“未来、子孫”の視点に立って、社会変革を強く意識したものでなければならない」と指摘。そのためにも「社会的価値を経済的なインセンティブに変換するための施策が必要」と語った。

「イノベーション推進のためにとるべき行動とは―次世代の教育、“Openness”、民間の役割を中心に」をテーマに行われたパネルディスカッションでは、一橋大学大学院の石倉洋子教授をモデレーターとして、サミクサ社社長兼CEOのディーパック・バンガロール氏、中国科学院科学技術政策・管理科学研究所リサーチフェロー、清華大学経済管理学院兼任教授のシューリン・グー氏、日立製作所フェローの中村道治氏、ニューヨーク科学アカデミー会長のエリス・ルービンシュタイン氏、経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏の5氏がパネリストとして参加。各国のイノベーション推進活動において中核をなしている次世代の人材育成、リスクの高いイノベーションに対する資金提供、世界レベルの課題に対する解決のアプローチに関して、実際の活動から課題と解決案を議論した。

【産業第二本部開発担当】
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