日本経団連タイムス No.2871 (2007年8月9日)

「飛鳥II」で7月合宿講座実施

−第18期日本経団連フォーラム21


今年5月にスタートした第18期日本経団連フォーラム21は7月30日から8月1日にかけて、7月合宿講座を実施した。研修会場は客船飛鳥II。アドバイザーを務める茂木賢三郎キッコーマン副会長、山内昌之東京大学大学院教授、寺島実郎常務執行役員・三井物産戦略研究所所長の3氏が講師として乗船、「日本の進路を考える」を総合テーマに、参加者を交え活発な討議を行った。

「日本の進路を考える」をテーマに活発な討議

合宿講座の初日は、夕刻の乗船を前に横浜市内のホテルで講義を実施。茂木アドバイザーが「これからの世界において日本社会の現状と将来を考える」と題して基調講演を行い、討議の個別課題と着眼点を提起した。

茂木アドバイザーは個別課題の第1に「企業経営のパラダイム」を挙げ、コーポレート・ガバナンスのあり方、企業倫理・コンプライアンスなどに関する諸問題について言及。第2の課題「日本国家のあり方」では、格差問題、少子化・高齢化への対応、教育制度のあり方など、第3の課題「日本のアイデンティティーと外交・安全保障」では安全保障体制、地球環境問題、国際社会における日本などについて持論を展開した。

特に少子化については、子ども同士のコミュニケーション能力の低下や切磋琢磨の機会の減少など、少子化が与える社会的影響に強い懸念を示した。

茂木アドバイザーの課題提起を受け、午後には山内アドバイザーが、「イスラーム世界と中東政治力学の変動」と題して講演。現代の中東で何が一番の問題なのか、国家の個別性、国際秩序を超えた地域性などから本質をとらえ、日本の立場について探った。

講義終了後、フォーラムメンバーは客船飛鳥IIに乗船し、船内研修に臨んだ。

合宿2日目は早朝8時から、パネルディスカッションを前に寺島アドバイザーが「世界潮流と日本の進路を考える」と題して講演。寺島氏はまず、「世界潮流の的確な認識なくして経営はあり得ない」とし、21世紀に入って6年間の世界の動きや流れを、自身が目撃、体験してきた事実を基に解説した。

さらに、21世紀初頭への視点として、日本産業が転換期にあることを指摘。経済の成長力と産業力とは別物であり、ものづくりを大事にする健全な産業観の復権による基盤体力強化が重要であることを強調した。

その後のパネルディスカッションでは、アドバイザー3氏と参加メンバーが活発な討議と意見交換を行った。

討議の中でテーマに挙がった日中・日韓の歴史問題については、両国の歴史共同研究委員でもある山内アドバイザーが、「歴史上起こったことはひとつでも、ものの見方はひとつではない」とし、「大事なことは見ること、話すこと、付き合うこと。原点に戻って虚心に向かい合えば、考えに食い違いがあっても理解が進む」と述べた。

合宿3日目は下船後に、横浜市の「三菱みなとみらい技術館」を訪問。福原由香館長から同館の設立趣旨や活動について説明を受けるとともに、体験コーナーではCGで再現した横浜上空を、MHヘリコプターをモデルとしたシミュレーターを使って操縦するスカイウォークアドベンチャーにチャレンジした。

同館は科学技術への理解・啓発を主な目的に、三菱重工業が1994年に開設したもので、同社のCSRを体現する重要施設として位置付けられている。子どもから大人まで、幅広い年齢層の一般客を中心に、昨年度の入館者は12万人を超える人気。地域交流や近隣の小学生の受け入れなど、活発な運営体制を取っている。

7月合宿講座を終えフォーラム21の次回9月講座は、海外視察の事前勉強を兼ね、寺島アドバイザーから「アジアとユーラシアのダイナミズム」について、併せて関志雄野村資本市場研究所シニアフェローから「中国の経済改革」について学ぶ。

◇◇◇

日本経団連フォーラム21は1990年にスタート、毎年5月に開講し翌年3月に修了する。参加メンバーは日本経団連会員企業で、トップの推薦を受けた経営幹部。日本経団連会長をチーフアドバイザーに、企業トップ、学識経験者らがアドバイザーを務める。これまでに487名の修了生を送り出した。

【日本経団連事業サービス研修担当】
Copyright © Nippon Keidanren