日本経団連タイムス No.2873 (2007年8月30日)

コノートン米環境評議会議長と懇談

−地球温暖化防止のための国際枠組/京都議定書後、米政府の考え方聴取


日本経団連は7日、東京・大手町の経団連会館にジェームス・コノートン米国大統領府環境評議会議長を招いて、京都議定書以降(2013年以降)の地球温暖化防止のための国際枠組に関する米国政府の考え方を聴くとともに意見交換を行った。日本経団連からは、米倉弘昌副会長、桝本晃章東京電力顧問らが出席した。

コノートン議長は、今後の米国政府の対応として、「08年末までに京都議定書後の国際枠組について主要国が合意する旨明記されたハイリゲンダム・サミットの首脳宣言の具体化を検討するため、米国は、9月27、28日の日程で、主要な温室効果ガスの排出国を招き、『気候変動に関する主要経済国会合』を主催する。同会合では、京都議定書後の国際枠組について、米国から、各国がそれぞれの判断により、セクター・削減技術ごとに温暖化防止に向けたアクションを『自己申告』する『ボトム・アップ・アプローチ』の導入を提案したい。自己申告の内容は中長期を目標とし、拘束力を伴わないことが考えられるが、その場合、各国の取り組みを測定し、レビューするシステムの確立等が重要である」と述べた。

また、「温暖化防止のために特に対応すべきセクターとして、(1)石炭火力発電(2)運輸(3)森林・農業――が挙げられる。CO2排出増の原因の70%は石炭火力発電、15―20%は運輸部門である。現在の温暖化に関する議論では、産業部門をはじめとするエネルギーを消費する側のコストを上げて、温室効果ガスの排出を抑えようということに重点が置かれ過ぎている。しかし、経済成長のためには、むしろエネルギー消費のコストを下げる必要があり、そのためには、これら分野でエネルギー効率を向上させる革新的な技術が必要である。このような枠組は京都議定書より現実的であり、民間セクターが参画する余地が大きく、中国、インドがより主体的な役割を担い得るという点で優れている」と指摘した。

京都議定書以降の国際枠組における拘束力のある目標・規制のあり方については、「京都議定書は先進国に拘束力ある削減目標を押し付けているところに根本的な問題がある。京都議定書後の枠組では、拘束力のない中長期目標を設定することとすべきである。これにより、各国が重要なセクターに絞って実現可能な目標を掲げることが可能となり、政治的に受け入れられやすくなる。国際法(議定書)レベルでの拘束力は必要なく、国内法レベルで実効性ある措置が担保されればよい。こうした国内法レベルの措置の例として、米国では国内法上、自動車の燃費効率向上をはじめエネルギー効率や排出削減に関する拘束力を伴う規定のほか、技術開発への補助金がある。欧州では環境税がその例である。日本では日本経団連の自主行動計画が事実上の拘束力を有しているといえる」との見方を示した。

排出量取引制度に関しては、「現行のCDM(クリーン開発メカニズム)には問題がある。排出量取引制度に代えて、効率的な企業が成長し、非効率な企業が衰退する制度を導入すべき」というコメントがあった。

来年7月に日本で行われる洞爺湖サミットについては、「安倍総理大臣には、『ボトム・アップ・アプローチ』の採用、技術開発や民間資金の調達を重視した対応を期待したい」と述べた。

【産業第三本部環境担当】
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