日本経団連タイムス No.2873 (2007年8月30日)

経済広報センター、地球温暖化に関する意識調査結果発表

−6割が省エネなど産業界の取り組みを評価


日本経団連の関連組織である経済広報センター(御手洗冨士夫会長)は10日、「地球温暖化に関する意識調査報告書」を発表した。現在、わが国全体の二酸化炭素排出量は、1990年と比較して8%以上増加している。産業部門は90年の水準を下回っているが、民生部門の排出量が増加しており、わが国全体の排出量削減のためには、産業部門と一体になって民生部門の二酸化炭素排出量削減に取り組む必要がある。同報告書は、地球温暖化がどのように意識され、どのような取り組みを実行しているかを明確にするために、「地球温暖化への実感」「生活者、企業、行政それぞれに期待する取り組み」「ポスト京都議定書」などについて調査を行い、その結果を取りまとめたもの。インターネットで回答可能な社会広聴会員(2961人)を対象に6月に実施、2102人(71.0%)から回答を得た。

調査によると、二酸化炭素排出量削減や省エネルギーに対する産業界の取り組みを6割が評価。今後は、「省エネ型製品の商品化」「工場などでの省エネルギーの推進」への取り組みが期待されていることがわかった。一方、生活者のほとんどは地球温暖化を「意識はしている」ものの、取り組みについては「できる範囲」にとどまっている現状が浮き彫りになった。調査結果の概要は次のとおり。

1.地球温暖化の認識

地球温暖化が「身近な問題である」と感じている人は全体で55%、「ある程度身近な問題である」を含めると95%を占めている。世代別にみると、世代が上がるにつれて、地球温暖化を「身近である」ととらえる回答が多くなる。若い世代(29歳以下)では、「身近な問題である」が44%であり、他の世代と比較して地球温暖化への関心が低い。

2.「京都議定書」の削減目標達成の可能性

京都議定書で日本が求められている削減目標について、「現状を見ると、達成できない可能性がある」が64%で最も高く、「確実に達成できない」の15%を含めると79%が削減目標の達成を疑問視している。また、29歳以下の世代では「確実に達成できない」が24%であり、若い世代が京都議定書の削減目標達成について厳しい見方をしている。

3.産業部門の二酸化炭素排出量削減への取り組みの評価

産業部門の二酸化炭素排出量削減の取り組みについて、「非常に評価できる」(7%)と「ある程度評価できる」(54%)を合わせると、6割を超える。世代別にみると、「評価できる(非常に/ある程度)」は、世代が上がるにつれて多くなっている。

4.企業に期待する取り組み

二酸化炭素排出量削減や省エネルギーについて、企業に期待する取り組みは、「省エネ型製品・機器の開発・商品化をより進める」が78%と最も高い。次いで「工場などで使用するエネルギーや資源量の削減をより進める」が64%であり、いわゆる本業での取り組みが企業に期待されているといえる。

5.日常生活での地球温暖化に対する意識・行動

地球温暖化防止のための行動については、「意識はしているが、できる範囲だけで行動している」が75%と高い。意識していても、実際に積極的に実行することは難しいといえる。ただ、「積極的に行動している」と「できる範囲だけで行動している」を合わせた回答は9割を超えており、環境を意識して何らかの行動をしている人が多い。

6.日常生活での現在および将来の具体的な取り組み

現在行っている取り組みの上位5項目はいずれも回答率が5−8割で、「こまめに消灯したり、テレビなど家電の主電源を切る、コンセントを抜くなど待機電力を小さくする」のような、日常生活で比較的容易に取り組むことのできる項目が並ぶ。また、29歳以下の若い世代は、日常生活で現在の利便性が低下したり、追加的な費用が掛かる取り組みは、他の世代と比較して10−30%低い。
今後行ってみようと思う取り組みは、「ハイブリッドカーなど低燃費の車に買い替える」(32%)が最も多い。

7.国や自治体に期待する取り組み

国や自治体に期待する取り組みは、省エネにインセンティブを与え、市場論理に組み込むという考え方である「国や自治体で、省エネに取り組むと得をする仕組みを作る」が62%で最も高い。一方、単純な補助金政策である「省エネ型製品への買い替えに対して、国や自治体が補助金を出す」は35%と低い。また、「学校や地域での子どもたちへの環境教育を強化する」は51%で2番目に高く、子どもへの環境教育や意識改革の重要性を示唆している。

8.「ポスト京都議定書」の方向性

「削減義務を負わない国の二酸化炭素排出量が大幅に増加しているため、先進国と発展途上国が広く参画できるような新たな枠組みを作る」が75%と最も高い。

同調査の詳細は、経済広報センター国内広報部(電話03−3201−1412)まで。

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