日本経団連タイムス No.2875 (2007年9月13日)

ジャワ島中部地震被災地支援活動報告会を開催

−医療・復旧支援で成果/子どもの心理面のケアも


日本経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で、昨年5月27日に発生したジャワ島中部地震の被災地支援活動に関する報告会を開催した。報告会では日本赤十字社、ジャパン・プラットフォームの現地における支援活動について、写真で紹介しながら報告が行われたほか、支援活動現場の視察の模様が報告された。日本経団連では地震発生直後から、義援金の協力を呼び掛けており、2006年9月22日時点で、義援金は14億4553万円(うち経済界募金629社・団体・5億8884万円)。また39社から1億8299万円相当の救援物資の提供について報告があり、支援総額は16億2852万円に上っている。

■報告

まず日本赤十字社(日赤)事業局国際部長の田坂治氏が、日赤の支援活動について報告した。地震発生直後の6月から救援チームを派遣し、医療活動を開始したのに始まり、「被災者の生活基盤の復旧」をめざして、(1)仮設住宅の建設(2)学童セット配付(3)地域診療所の再建(4)特殊学校衛生施設再建(5)被災小学校再建――の五つの事業に取り組み、次の段階として、「社会的弱者の支援と被災者全体の生活の改善」をめざして、障害者の作業所再建や職業訓練用機材の提供、雨水貯水槽の建設等に取り組んだと説明した。続いて日赤のジョグジャカルタ駐在代表の五島美保子氏が、地震後の渇水対策としての雨水貯水槽建設に関するパイロット事業の具体例を報告。日赤のマネジメントの下、インドネシア赤十字のボランティアが進行状況の確認、問題点の指摘などを実施、助っ人技術者による技術指導、講習会を経て、村人自ら建設に当たったことなどを紹介した。

次にジャパン・プラットフォーム(JPF)代表理事の長有紀枝氏から、同法人の活動について報告があった。長氏は、企業、NGO、国等がオールジャパンで日本の緊急援助のシステムをより良くしていくことを目的に、日本経団連の協力の下、設立されたとJPF発足の経緯を説明。JPFを構成する25のNGOが、それぞれの持ち味を生かして、(1)初動対応(2)緊急支援(3)復旧支援――の三つの段階で支援活動を行っていると述べた。具体的には医療支援、簡易住宅の建設、伝統の土器産業の復旧、漁船ファンドによる融資、演劇による心のケアなど、1年間それぞれのニーズに応じた多様な支援を展開してきたと説明し、NGOの共同体であるJPFならではの特長であると指摘。資金、組織力、人材、サービス、物資などさまざまな支援に関して、企業との連携におけるJPFの意義を強調した。

続いて具体的事業について、日本国際民間協力会事務局長の折居徳正氏、国境なき子どもたちプログラム・ディレクターの森田智氏が報告。この中で折居氏は、心理面のケアを目的とする小学生対象のワークショップ、住民3万7000人を動員した演劇によるワークショップに言及。ワークショップは小学生を対象に心理テスト、描画、ドラマ発表会を通じて、児童に心の傷に対する受容、理解を深め、心の傷から立ち直り、未来へ向かっていく契機とする。演劇を通じたワークショップは、各村で劇団をつくり地震に関する演劇を演じ、観客と地震の痛みを共に分かち合うというもの。一方、森田氏は、青少年がトラウマからPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥る危険性が高いことから、託児所(チルドレンセンター)による心理面でのケアを行うとともに、学習の場を提供することで大多数の子どものトラウマ症状の緩和に成功したこと、また子どもを預けることで生活再建にも貢献することができたと成果を報告した。

企業の寄付、有効に活用/現地での活動へ高い評価

被災地の支援活動現場視察を行った東芝社会貢献室長の日比野亨氏は、ヒアリングの結果、企業およびNGOとの協力により、企業の寄付が有効に活用され、現地での活動が高い評価を受けていると実感したと報告。JPFには、日本のNGOの活動をより周知してほしいと要望するとともに、企業の社会貢献担当者が支援活動の現場を見ることの必要性を強調した。最後に、大和証券グループ本社CSR室次長の金田晃一氏が、企業との連携にかかわるJPFの課題として、(1)本社だけでなく現地法人などとの連携(2)現地の支援活動、寄付の使い道の情報開示――の2点が必要であると指摘。一方、企業には、被災者のニーズに合った商品・サービスの提供・開発など、本業を活用することで支援に生かしていくことを提案した。

【社会第二本部企業・社会担当】
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