日本経団連タイムス No.2876 (2007年9月20日)

今後のわが国税制のあり方と平成20年度税制改正で提言

−継続的成長の促進などを強調


日本経団連は18日、「今後のわが国税制のあり方と平成20年度税制改正に関する提言」を取りまとめ公表した。

わが国経済は比較的安定した状況にあるものの、資源価格の高騰や株価動向、地球環境問題など予断を許さない。また、国内における急速な少子高齢化・人口減少とともに、企業活動や資金移動のグローバル化が一層進展しており、わが国は、これまで経験したことのない激しい環境変化の中で、財政健全化と持続的な成長を両立していかなければならない。同提言の概要は、次のとおり。

【今後のわが国税制のあり方】

国を形づくる基本的枠組みである税制は、長期に安定的で持続可能で、わが国の継続的な成長を促進する制度でなければならない。

  1. (1)今後、年1兆円のペースで増大する社会保障費用や少子化対策の財源を賄い、かつ、債務残高のGDP比を着実に減少させていくために、国・地方を通じた徹底した歳出削減を前提として、消費税率を引き上げ、今後のわが国における基幹的税目として役割を拡大していくことは不可避。

  2. (2)地方税の基本は、受益者である住民自らがサービスと負担を選択することにある。このような観点から、地方税は、選挙権を持つ個人の住民税や土地・家屋への固定資産税ならびに法人が受けた自治体のサービスに見合う簡素な課税を基本とすべき。

  3. (3)地方法人二税(法人住民税、法人事業税)は、地域偏在性が高い上、景気に左右されやすいため、住民に対する安定的なサービスを賄う財源としては不適切であるため、国税である法人税へ一本化していくべき。

  4. (4)世界各国では、企業活動の活性化のために法人税率の引き下げが相次いでいる。先進諸外国との10%程度の格差は、企業の国際競争力の維持強化や対内直接投資促進の上でも無視できない水準となっている。法人実効税率を英独仏並みの30%をめどに引き下げるべき。

【平成20年度税制改正に関する提言】

平成20年度の改正では、税制抜本改革の第一歩として、経済成長の維持、さらなる成長への基盤整備という視点を重視して取り組む必要がある。

  1. (1)わが国が科学技術創造立国として持続的な発展を遂げていくためには、産業競争力の強化に直結する民間の研究開発を促進する税制措置が不可欠。現行の研究開発促進税制の控除限度額・控除率の拡充や限度超過額の繰り越し期間の延長を図るべき。また、ITの活用による企業の生産性向上が急務であり、情報基盤強化税制や人材投資促進税制の拡充も必要。

  2. (2)減価償却制度については、今年の課題として残されている減価償却資産の区分や耐用年数の大括り化は、昨年同様、企業の国際的競争力を高めるという観点から進めるべき。

  3. (3)貿易を糧とするわが国産業にとって、国際税制の整備は重要なインフラであり、外国税額控除の仕組みや移転価格税制およびタックスヘイブン税制の見直し、租税条約ネットワークの拡大が必要。

  4. (4)民間の公益活動を社会において積極的に位置付けるため、新たな公益法人制度と整合的な公益法人税制ならびに寄附金税制の抜本的拡充が必要。

  5. (5)企業年金の運用資産に対する特別法人税については廃止すべき。さらに、企業型確定拠出年金における個人拠出の容認や、拠出限度額のさらなる引き上げが必要。

  6. (6)金融・証券税制に関しては、貯蓄から投資への流れを加速させる観点から、上場株式等の譲渡益、配当にかかる10%の軽減税率の適用期限を延長すべき。同時に、金融所得の一元化に向け、譲渡損益と配当など、可能なものから損益通算の範囲を拡大すべき。

  7. (7)環境税については、価格による消費抑制効果はまったく期待できない。むしろ、環境税がないエネルギー効率が低い国に生産拠点が移転し、エネルギー消費の増加につながる懸念がある。

  8. (8)省エネルギー対策と新エネルギーの導入を後押しするエネルギー需要改革投資促進税制について、対象設備の拡大など充実を図るべき。また、CO排出削減が強く求められる民生部門への対策の一環として、省エネ住宅の新築や改修を促進する税額控除制度を創設すべき。

世界各国では法人税制や消費税をはじめとする税制の抜本改革を終え、新たな成長を加速させている。中国、インドをはじめとするアジア諸国の経済発展も目覚ましい。日本の将来に向け、今行うべき改革のあり方について、与野党の枠組みを超えて、透明で真剣な議論を重ね、国民的議論を喚起すべきである。

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日本経団連では、年末に向けた来年度税制改正で産業界の意見が反映されるよう、引き続き積極的な働き掛けを行っていく予定である。

【経済第二本部税制・会計担当】
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