日本経団連タイムス No.2876 (2007年9月20日)

「外国人研修・技能実習制度の見直しに関する提言」公表

−「研修生保護」で考え方示す/再技能実習制度化も


日本経団連は18日、「外国人研修・技能実習制度の見直しに関する提言」 <PDF> を取りまとめ公表した。

外国人研修・技能実習制度は、外国人材への技能移転と国内産業の人材確保という点で、途上国の経済発展ならびにわが国の産業、地域経済の維持に貢献しており、同制度自体は基本的に今後とも維持すべきである。他方、受入れ機関等による不正行為や研修・技能実習生の失踪等の問題が発生しており、内外から批判があるのも事実である。

こうした中、同制度を安定的に運用していくためには、不正行為に対する罰則の強化等により送出し機関・受入れ機関の適正化を図ると同時に、優良な受入れ機関や研修・技能実習生に対しては優遇措置を講じるなど、メリハリのある対応が求められている。このような観点から、今般、日本経団連は、厚生労働省および経済産業省それぞれの研究会が2007年5月に取りまとめた提案を評価しつつ、同制度の見直しに関する産業界の見解を改めて明らかにした。具体的には、研修・技能実習の流れに沿って、各段階における改革案を示している。

これらのうち、厚労省と経産省の提案で明確に異なる点に対する日本経団連の考えを示したものが、研修生に対する保護のあり方である。厚労省案は、現行の研修を廃止し来日当初から雇用関係の下で3年間の技能実習とすることにより、労働関係法令を適用し法的保護を強化することを提案している。これに対し経産省案は、現行制度の1年間の研修を継続し、座学の義務付け、申告・相談窓口の充実等により研修生の保護を図ることを提案している。日本経団連では、技能移転を有効に行うためには、技能レベルを評価しながら座学、実務研修、技能実習を段階的かつ柔軟に実施すべきであると考えている。例えば来日前に日本語学習や日本企業での研修・勤務等の経験がある場合は、既に修得した日本語能力・職務知識等に応じ座学を短縮して実務研修に充て、さらに技能検定基礎2級相当の試験に合格した時点で、1年を待たず技能実習への移行を認めるべきであると考えている。これにより、研修生は早期に技能実習に移行でき、法的保護が強化される。

もう1点、産業界がかねて要望している再技能実習の制度化に関しても、両省の案は異なっている。厚労省案は企業単独型に限り、帰国後例えば3年を経過した後に2年間の再実習を認めるのに対し、経産省案は企業単独型・団体監理型を問わず優良認定を受けた受入れ機関について、帰国後半年から1年後に再実習の受入れを認めるとしている。日本経団連では、団体監理型でも地道に適正な受入れを行っている例は多く、制度の適正な利用へのインセンティブを高めるためにも、経産省案のように優良認定による再技能実習の制度化を図るべきであると考えている。さらに、経産省案で「将来的な課題」とされている再技能実習修了後の就労についても、早急に検討すべきである。

外国人材の受入れは、政府関係省庁・地方自治体が一体となって整合性ある施策を推進すべき課題であり、そのための体制整備が不可欠である。そのためには、外国人材を受け入れ、多文化共生社会を実現するための推進基本法を定めるとともに、内閣に「多文化共生社会推進本部」(仮称)を設置し、必要な企画・立案・調整を行う体制を、早期に実現することを求めたい。

【産業第一本部産業基盤担当】
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