日本経団連タイムス No.2877 (2007年9月27日)

NICC協議会第6回総会開く

−中国における人材マネジメントに関する講演聴取


日本経団連のNICC協議会(立石信雄委員長)は12日、東京・大手町の経団連会館で第6回総会を開催した。日本経団連の関連組織であるNICC(日本経団連国際協力センター)の2006年度事業報告や07年度事業の進捗状況の説明のほか、中国における人材マネジメントついての講演を聴取した。

冒頭のあいさつで立石委員長は、「アジアを中心とする途上国の若手経営管理者の育成とともに、経営者団体の育成・強化を行うことによって、現地における健全な労使関係の基礎をつくり、ビジネス環境の整備と安定的な経済発展にも寄与してきた」とNICC事業の意義を強調するとともに、NICCを支援している協議会会員企業に対して感謝の意を表し、引き続きの支援を呼び掛けた。

同協議会会務報告の後、北川哲夫NICC専務理事が、06年度の活動報告および07年度の事業進捗状況などを説明した。06年度には、長期(8カ月)の「アジア諸国人事労務管理者育成事業」をはじめ、短期の招聘プログラムを7件、賃金システムや労働安全衛生、管理研修プログラム(MTP)などのテーマで9件の海外セミナーを実施したとの紹介があった。

06年度事業のうち、雇用・能力開発機構から委託されて行った「企業の活力を生む人事システムの方向性に関する調査研究」については、実際に参加したキヤノンの川崎隆治課長代理と三菱東京UFJ銀行の松野善方上席調査役が、調査研究結果などについてコメントを述べた。川崎氏は、企業の活力を生む人事制度のポイントとして、人事評価・人材育成・人材活用を挙げ、松野氏は、企業理念の浸透を図るなど、ミドルマネジメントの役割の重要性を強調した。両氏はNICCの調査研究に参加することによって、こうした点を改めて確認でき、貴重な経験になったと述べた。

引き続き北川専務から、07年度については、06年度とほぼ同様の規模で事業を実施中との報告があった。さらに、各国経営者団体との連携の下、研修事業の質の向上と協議会会員企業への海外情報のフィードバックに取り組んでいるとの説明があった。

■講演

北京オリンピックや上海万博を控え、中国は引き続き高い経済成長が見込まれる一方、「調和のある社会」をめざし、労働者保護等を主眼とする「労働契約法」を制定した。このような背景から、今年度の総会では、中国における今後の日系企業の人材マネジメントの先進事例として、日立製作所の取り組みについて同社の飯塚毅人材戦略室担当部長から講演を聴取した。

飯塚氏は、日系企業の中国における人材マネジメントの問題点として、現地スタッフに対し十分な教育機会を与えていないため、能力の向上が図られず、権限の委譲も進まない、その結果モチベーションの低下と優秀人材の離職が起こっていると指摘。その解決策として、教育機会を与え、その中で企業の魅力や仕事の面白さを伝え、実感させるとともに、評価基準の明確化、評価結果のフィードバックの確実な実施が重要であると述べた。

また、中国政府の労働政策は、労働者の権益保護を図り、協調的な労使関係を構築し、労働問題を各企業内で解決させる方向に向かっており、その文脈において新たに労働契約法が制定されたと解説した。さらに、来年1月から同法が施行されるに当たり、雇用コストの上昇は今後ある程度織り込まざるを得ないこと、就業規則等の明文化と労使コミュニケーションの緊密化が重要であることなどを指摘した。

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NICCは1994年に日経連(当時)が設立した団体で、開発途上国の経営者団体の健全な発展ならびに経営管理者の育成をめざし、招聘研修事業などを実施している。NICC協議会は、NICCを財政的に支援している企業で構成され、NICCの活動への理解を深めるとともに、委員企業の意見を集約してその活動に資することを目的としている。

【労政第二本部国際労働担当】
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