日本経団連タイムス No.2879 (2007年10月11日)

少子化対策委員会を開催

−「BTジャパンのワーク・ライフ・バランス」聴取


日本経団連の少子化対策委員会(池田守男共同委員長、鈴木茂晴共同委員長)は3日、東京・大手町の経団連会館で委員会を開催し、BTジャパン会長の北里光司郎氏から、「BTジャパンのワーク・ライフ・バランス−新しい働き方と生き方のモデルをめざして−」と題する講演を聴取した。北里氏の講演概要は次のとおり。

◆ワーク・ライフ・バランス3原則

BTでは次の3原則に基づいて施策を行っている。
原則1「仕事に大事なことは、どこで働くかという場所ではなく、何をするかという内容である」
原則2「ワーク・ライフ・バランスは社員および企業の双方にメリットがあり、その効果は常にデジタルに把握すべきである」
原則3「ワーク・ライフ・バランスは、企業が社員に対する福祉のために行うコストではなく、経営戦略上の重要な投資として位置付けるべきものである」

◆フレキシブルなワーキングスタイル

この3原則に基づき、BTでは多様な制度を設けている。
集中勤務制度は、総勤務時間は同じだが、勤務日数を減らすものである。1日の労働時間を長くして、例えば、月曜日から木曜日までの週4日働き、金曜日は子どもに関する用事に充てることができる。
在宅勤務制度については、既に従業員の1割(約1万3000人)以上が完全在宅勤務を行っている。また、一部の勤務が在宅で、残りをBTや顧客のオフィスで行う部分的在宅勤務者は従業員の7割(約7万人)に達する。
長期休暇制度は最長2年まで、自己啓発や趣味など、特定の目的の場合に休暇を取得できるもので、災害ボランティア活動に参加するための休暇取得等の事例がある。
このようなフレキシブルワーキングを推進すべく、ガイドブック(マネージャー用と社員用)に基づき基本事項と進め方を徹底する、マネージャー教育を徹底するなどの施策も併せて行っている。

◆ワーク・ライフ・バランスの成果

成果は社内でデジタルに把握されている。
例えば、英国は欠勤者が非常に多い国であるが、欠勤率は英国の平均を2割も下回っている。従業員の退職率は2.8%に減少し、出産休暇後の女性の98%が職場復帰するということで、新規採用した場合のコスト約12億円が節約された。また、生産性が15〜31%向上するなどの多くの実績を挙げている。

◆ワーク・ライフ・バランス実現のための重要要件

ワーク・ライフ・バランスを推進する際、長時間働く労働習慣や、命令と統制による管理スタイル、新しい仕事と生活スタイルに対する偏見といった障壁がある。これらの障壁を超えてワーク・ライフ・バランスを実現するには、まず従業員に対する「信頼」が第一の要件となる。人が仕事のパターンを変えようとするときには理由を聞かずに実現可能かだけを尋ね、価値判断を避けることが重要である。
第二には経営陣によるコミットメントとリーダーシップ、第三に今までの仕事と生活にかかる習慣から脱却し、仕事は職場に長時間いることではなく、成果で示すべきだという意識改革が重要である。
日本では長時間働く企業文化や、フェイス・トゥ・フェイス・コミュニケーションを重視する人間関係、在宅勤務に適さない住宅環境、正規社員と非正規社員の大きな格差といった問題がある。
これらを見直し、ワーク・ライフ・バランスはコストでなく投資であるという経営の考え方を徹底することが重要である。

【経済第三本部国民生活担当】
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