日本経団連タイムス No.2879 (2007年10月11日)

「海洋基本法制定の軌跡と意義」

−海洋開発推進委員会で説明聴く


日本経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会(伊藤源嗣委員長)を開催した。同委員会では、政府が現在検討中の海洋基本計画に対して、産業界の意見反映を図るため提言の取りまとめ作業を進めている。その参考とするため、この日の委員会では、東海大学総合科学技術研究所の武見敬三教授から、海洋基本法制定の軌跡と意義について説明を聴いた。武見教授の説明概要は次のとおり。

1.国連をめぐる動き

国連では海洋と人類の共存を図る観点に立ち、半世紀前から海洋法について検討を開始した。その結果、領海12カイリ、排他的経済水域(EEZ)200カイリを規定した国連海洋法条約が1982年に採択され、94年に発効した。わが国では同条約を96年に批准した。日本のEEZは国土の12倍、世界第6位の面積を占めており、海洋国家として、経済活性化のための新たな基盤となる。

2.海洋権益の確保

東シナ海等をはじめとして近隣諸国との間で資源開発問題が生じており、海洋権益に関する関心が高まっている。また、大陸棚の限界を延長するため、国連への申請(200カイリを最大350カイリまで延長可能)を行い、認可を受ける必要がある。2009年5月の申請書の提出期限に向けて、関係省庁が調査を行っている。

3.海洋政策への提言

私は、以前自民党の海洋権益特別委員会の委員長として、海洋権益を守るための提言を行った。また、日本経団連をはじめとする各団体やアカデミアなどからもさまざまな提言が出されている。このような背景の下で、海洋基本法研究会が昨年4月に発足し、自民・公明・民主の超党派の議員、学識経験者等によるメンバーの下で12月に海洋政策大綱と海洋基本法案の概要についてまとめた。

4.海洋基本法の制定

海洋基本法研究会の法案をベースにして、実際の法案づくりが行われ、衆議院において委員長提案がなされ、全会一致で可決した。参議院においても賛成多数で可決され、7月20日に施行された。総理大臣を本部長とする総合海洋政策本部が内閣に設置され、政府が総合的・計画的に講ずべき施策等を規定する海洋基本計画の策定作業が現在行われている。基本計画は来年1月の閣議決定をめざしており、骨太の計画とする必要がある。このため、国際社会からの共感の獲得、研究・技術基盤の強化による海洋政策・海洋産業創成などが重要である。また、総合海洋政策本部事務局だけで抜本的計画をつくることは困難であり、従来の各省庁の政策を並び替えただけの計画にしないため、海洋政策担当大臣(国土交通大臣)と協力した政治のイニシアチブが必要である。さらに、政治、民間、大学の協力の下に、各省庁の立場を離れたダイナミックな計画をドラフトすべきと考える。

【産業第二本部技術担当】
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