日本経団連タイムス No.2879 (2007年10月11日)

中国・雲南省自然保護プロジェクト視察団派遣

−日本経団連自然保護協議会


日本経団連自然保護協議会(大久保尚武会長)は、公益信託日本経団連自然保護基金(KNCF)の支援先プロジェクトを視察するため、9月15日から20日の日程で大久保会長を団長とするミッション(村上仁志協議会監事を含め総員16名)を派遣、中国・雲南省麗江市近郊における二つの活動サイトを視察訪問した。

同協議会では毎年、現地の活動状況を視察するとともに、現地政府やNGOとの交流を図ることを目的とするミッションを派遣している。

今回の訪問先はアジア緑色文化国際交流促進会(AGA/中国)が行っている『三江併流世界自然遺産における生物多様性保全事業』と国際湿地保全連合中国委員会(WIC/中国)が行っている『ラシハイ高原湿地自然保護区の管理強化』の二つの活動サイトである。雲南省は世界的にみて生物多様性豊かな地域であり、同時に16の少数民族が居住する文化的にも豊かな多様性を有する地域といえる。

雲南省の北方にある迪慶州の中心都市シャングリラは標高3200メートルを超える高地にあり、チベット民族が多くを占めている。街ではその雰囲気が感じられる。シャングリラから麗江までの約160キロメートルにわたり、三つの大河(金沙江、ナンザン江、怒江)が交わることなく併流している地域が世界自然遺産に指定されている『三江併流』である。

シャングリラでは迪慶州政府の楊梓江副秘書長らとの懇談、世界文化遺産に指定されているチベット仏教寺院の松賛林寺などを見学、その後、金沙江(長江の上流に当たる)沿いに自然遺産地域を虎跳峡へと移動。納西族との交流会では個性豊かな民族舞踊などを見学した。

AGAの活動地の一つである桃花村では古くから持続可能な森林経営を営んできた伝統があり、この自然との共生のあり方、考え方をKNCFからの支援で設立された森林文化村や生物多様性センターなどを通して次世代に広く伝えていこうとしている。生物多様性センターでは大久保会長以下団員が希少種である紅豆杉を植樹、村民との親睦を図った。

玉龍県九子海村では、原生種サクラソウの大群落を見学、環境学習に活用されている集会所などを視察した。

また麗江市の楊一奔副市長との懇談では『東巴文化の根源には万物に生命が宿るとの考えがあり、自然と共生してきた』など、日本文化との共通性に話題が広がった。

WICの活動地、ラシハイは四つの湖からなる自然保護区で、中国最初のラムサール登録湿地である。冬場の渡り鳥の中継地となり、200種、10万羽以上が集まるとされている。プロジェクトで整備された渡り鳥の観察場や展示室を視察した。また周辺農家で導入されているメタンガス(動物の糞など)を利用した持続可能なエネルギー燃料システムを見学。同システムは既に95%の農家で活用されている。

最終日は昆明市へ移動し、雲南省人民代表会議の晏友椋副議長を表敬、西部大開発政策の中、発展している経済状況の下で、自然との共生に配慮した政策に注力しているとの話を聴いた。

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【今回の視察ルート】

9月15日
成田発⇒広州⇒昆明着、泊
9月16日
『迪慶州政府関係者と昼食懇談』『松賛林寺・虎跳峡』など世界自然遺産・文化遺産地域を視察、『現地住民との交流会』、シャングリラ泊
9月17日
『アジア緑色文化国際交流促進会活動サイト視察』(石頭郷役場、生物多様性センター、森林文化村、九十九龍譚など)『高美古天・地・人試験地視察』『玉龍県和議長との懇談』、麗江泊
9月18日
『国際湿地保全連合中国活動サイト視察』(ラシハイ湿地など)『アジア緑色文化国際交流促進会活動サイト視察』(九子海村、観光農業試験地など)、麗江泊
9月19日
麗江発⇒昆明着『雲南省晏副議長ら表敬・懇談』『昆明植物研究所訪問』ほか、昆明泊
9月20日
昆明発⇒広州⇒成田着
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