日本経団連タイムス No.2880 (2007年10月18日)

日本経団連グリーンフォーラム10月月例講座を開催

−「プロフェッショナルのための交渉戦略」具体的例題の演習交え学ぶ


「交渉は合意だけをめざすのではなく、その先にあるミッションを考えておくことがより大切」――。日本経団連が5日に開いたグリーンフォーラム10月月例講座で、指導に当たった隅田浩司大宮法科大学院大学講師は交渉のポイントをこのように強調した。今回は「プロフェッショナルのための交渉戦略」をテーマに、具体的な例題の演習を交えながら、交渉学のプロセスとキーポイントを学んだ。

まず、交渉をめぐるいくつかの誤解を解くことから講義は始まった。隅田講師は、交渉は経験を積むことでしか上達しないのではなく、体験を体系的に整理することで自分のスタイルが増え、交渉力はアップすると指摘。交渉の場においての臨機応変な対応だけでなく、効果的かつ冷静な判断を行うためにも事前準備が重要であり、交渉は駆け引きによる勝ち負けのみで決まるものではなく、そのほかの要素が大事になってくるとアドバイスした。

さらに、交渉の事前準備として五つのステップを示唆。その第1は、「状況を把握する」ことで、状況把握が不十分であれば、不満足な結果しか生み出さないが、同時に、交渉の中でいかに相手から情報を引き出すかという観点から、状況把握を完璧にやり過ぎないこともポイントとなってくること。第2に、交渉では相手と合意することを目的とするのではなく、合意した先にある「ミッション」を実現することが最も重要で、合意を急いだ安易な譲歩は避けなければならないこと。第3は、「目標を設定する」こと。合意の先にあるミッションを実現できる目標を設定することが肝要で、落としどころ探しはミニマムな合意を招くことから、高い位置にある目標を実現するような「上向きの交渉」が不可欠で、目標を低くした交渉に戦略は不要である。また、交渉に当たって合意に達しなかったときのために「最善の代替案(BATNA= Best Alternative to a Negotiated Agreement )」を準備しておくことも重要で、これが第4のステップ。BATNAを意識しておくことで交渉の視野は大きく広がり、第5のステップである「柔軟な選択肢」に結び付く。

隅田講師は、一つの条件にこだわらず全体を俯瞰することでさまざまな局面を知り、合意の幅が広がってくると述べた上で、交渉では、これらのステップを具体化し、賢明な合意を実現するために原則に立脚した交渉を進めていくことが求められると指摘。「交渉には相手が存在する以上、『必ず』ということはない。あらゆる交渉には、あらかじめ目標の最低ラインとBATNAを用意しておくことが必要とされる」と説明した。

交渉に関する基本的な理論の説明に続いて、例題に基づく演習を実施した。参加者を二つのグループに分け、それぞれが個別事情を踏まえた上で交渉を担当する企業の当事者となり、「ミッションは何か」を考えるところからスタート。交渉すべき個別内容、BATNAを検討し、最終的に1対1での個別交渉を行った。演習の最後に、隅田講師が、演習の中で参加者が感じた疑問点について解説した。

【日本経団連事業サービス研修担当】
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