日本経団連タイムス No.2881 (2007年10月25日)

「今後の海洋政策のあり方と海洋基本計画策定へ向けて」を発表

−期待や要望点など示す


日本経団連は16日、提言「今後の海洋政策のあり方と海洋基本計画策定へ向けて」を発表した。同提言は、4月に海洋基本法が成立し、来年初頭を目途に海洋基本計画が策定されるという、わが国の海洋開発利用にとっての転換点を迎えている中、今後の海洋政策への期待や、海洋基本計画に対する要望等について述べたものである。提言の概要は次のとおり。

1.基本法に基づく新たな海洋政策への期待

資源・エネルギーの確保、環境問題の解決、安全保障など海洋の持つ重要性はますます高まっている。わが国は、国土面積では世界第60位であるが、排他的経済水域(EEZ)の面積は国土の12倍、世界第6位に達する。これを有効に活用し、将来にわたって海洋との共生関係を強化していかなければならない。そのためには、科学的知見、開発利用技術、インフラ、そして何より競争力のある海洋産業が不可欠である。

基本法成立によりわが国の海洋政策が大きな転換点を迎えている今、海洋国家日本の礎を築き、将来におけるわが国の繁栄を維持すべく、関係者が一致協力して取り組みを進める必要がある。

2.基本計画に対する要望

(1)基本計画策定の方針

基本法は、省庁縦割りの海洋行政を排し、一元的・総合的な海洋政策を推進することを大きな目的として制定された。そこで、総合海洋政策本部は、各省庁がばらばらで実施していた施策の相互連携を図り、プロジェクトの明確な優先順位付けを行い、必要な財源を確保して優先順位に応じた予算配分を実現すべきである。従来の施策を寄せ集めて発表するだけでは何の意味もない。
また、基本計画は今後の海洋開発利用に関する海図であり、明確な国家戦略に基づくグランドデザインと、それを実現するためのロードマップを示すことが期待される。さらに、海洋をめぐる各種課題に対し国家が一丸となって取り組む前提として、国民に対する教育・啓発活動の強化を通じた理解向上や、わが国が権益を主張できる海域の最大限の確保、およびそれを有効に開発利用できる環境整備が必要である。

(2)海洋産業の振興と国際競争力の強化

海洋産業は多岐にわたっており、その活性化は他産業への波及効果も大きく、わが国の経済社会の発展、国民生活の向上等に大きく貢献する。基本法にも「海洋産業の振興と国際競争力の強化」が明記されており、政府は海洋産業の競争力強化と新規事業の創出を基本計画の重要な柱とし、海洋における安全な企業活動を保障するとともに、高度な技術開発基盤の構築や税制支援措置の導入、鉱物水産資源の確保を実施すべきである。

(3)国家プロジェクト、国際的大規模プロジェクトの推進

これらを達成するため、次の取り組みを基本計画に盛り込み、重点的に推進すべきである。

  1. 1)管轄海域の調査とデータの一元管理
    「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)に基づき、現在認められている200海里に加え、最大150海里の大陸棚延伸が可能となる。そのためには調査を実施して情報をまとめ、2009年5月までに国連「大陸棚の限界に関する委員会」に申請することが必要であるが、期限内に手続きが完了するよう、政府は必要な措置を着実に実施すべきである。また、わが国が権益を主張できる海域の潜在能力を把握するため、鉱物資源の埋蔵位置や賦存量、生物資源の分布等を徹底的に調査し、基礎データの蓄積・管理を行うとともに関係者と共有を図り、有効に活用すべきである。

  2. 2)洋上基地の構築と活用
    わが国のEEZおよび大陸棚の開発・利用・保全の促進、産業基盤の構築や人材育成、研究開発能力向上等を包括的に実現するため、管轄水域内に洋上基地を構築し、そこを拠点として資源・エネルギー開発、食料生産、海洋観測、防災関係等のプロジェクトを総合的に実施すべきである。

  3. 3)今後の政策推進に向けて
    統合国際深海掘削計画(IODP)等、諸外国との連携による大規模プロジェクトを推進し、わが国の技術水準向上に努め、国際的な秩序形成・発展に先導的な役割を担うべきである。

3.今後の政策推進に向けて

基本法や国会決議の趣旨を踏まえ、政府は今後の施策推進に当たり、総合的な視点を持つべきである。総合海洋政策本部に設置された参与会議の果たす役割は重大であるが、現在のメンバーは研究者が中心であり、海洋開発利用の重要プレーヤーである産業界の意見が政策に反映されない状況となっている。政府は産業界をはじめとするさまざまな関係者との連携を深め、総合的な議論を展開する姿勢を持つべきである。

【産業第二本部海洋担当】
Copyright © Nippon Keidanren