日本経団連タイムス No.2881 (2007年10月25日)

京都議定書後の国際枠組みのあり方に関する国際シンポジウムを開催

−セクトラル・アプローチ研究の第一人者ら招き、温室効果ガス削減策探る


日本経団連は、GISPRI(地球産業文化研究所)と共催で15日、東京・大手町の経団連会館において、国際シンポジウム「地球温暖化に関するポスト京都議定書の国際枠組みのあり方」を開催した。ポスト京都議定書の国際枠組みに関しては、温室効果ガス削減ポテンシャルの高い途上国における省エネ推進がカギとされており、そのための方法として、電力、鉄鋼といった分野ごとに関係各国がエネルギー効率改善に取り組む「セクトラル・アプローチ」の有用性が注目されている。同シンポジウムは、セクトラル・アプローチ研究の第一人者であるダニエル・ボダンスキー米国ジョージア大学教授をはじめ、内外の専門家を招いて行われた。

ボダンスキー教授は、「『セクトラル・アプローチ』という言葉の使われ方として、温暖化対策を進めるための産業部門ごとの合意という意味に加え、国別の温室効果ガス削減目標を設定するための積み上げを部門ごとに行う手法等を指す場合もある」と説明した上で、「産業部門ごとの合意については、京都議定書のような国別の温室効果ガス削減を代替あるいは補完する役割がある」とした。また、「産業部門ごとの合意には、政府・民間等が参加し、温室効果ガス排出原単位等の目標や再生可能エネルギー使用基準の採用等の特定の政策の実施、研究開発・普及、資金調達等が対象となり、想定される産業部門として、アルミニウム、鉄鋼、自動車、電力、土地利用などがある」とした。さらに、産業ごとの合意のメリットとして、(1)国別キャップを望まない国も参加できる(2)交渉当事者数が限られるため交渉が容易になる――等を指摘した。

その後、経済産業省の石田徹産業技術環境局長が、今年5月に日本政府が提案した「Cool Earth 50」を紹介し、「主要排出国の参加・柔軟かつ多様性のある枠組み・環境と経済の両立という3原則を実現するために、セクター別アプローチやエネルギー効率の重視、革新的技術開発の重視が必要である」と指摘した。澤昭裕21世紀政策研究所研究プロジェクト主幹(東京大学教授)は、「『ポスト京都議定書』に向けた日本の戦略と国際協力策」の中間報告を行い、「ポスト京都議定書は、2013年から50年間という長期の約束期間を設定した上で、5年ごとに措置の交渉や更新を行うものとすべき」とした。また、「ポスト京都議定書では、(1)主要排出国については、国際的に法的拘束力のある『措置』を規定する(2)主要排出国を含むUNFCCC(国連気候変動枠組条約)締約国全体については、国内措置の約束・実行を規定する(国際的な法的拘束力なし)(3)企業や団体など民間主体が自らの温暖化防止活動を新議定書付属書に登録する――といった構成とすべき」と提案した。

パネル討論や質疑応答

この後、セクトラル・アプローチの経験がある新日本製鐵の山田健司環境部長、東京電力の影山嘉宏環境部長、ボダンスキー教授、澤主幹によるパネル・ディスカッションと質疑応答を行った。

排出権取引制度については、山田部長が、「衰退産業・企業が排出権を売った収入で生き残る一方で、成長産業は排出権を買わなければならず、公平な競争を阻害する」と指摘。また、影山部長は「排出権取引では、どのように排出量が削減されるのか明示されないが、セクトラル・アプローチでは、技術導入による具体的な排出削減量が算定可能である」と述べた。

【産業第三本部環境担当】
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