日本経団連タイムス No.2881 (2007年10月25日)

日本経団連フォーラム21、10月講座を開催

−海外視察を前に武士道の今日的意義探り訪問先中国の文化やビジネス慣習を学ぶ


日本経団連フォーラム21は5日に都内で10月講座を開催し、11月の海外視察を前に第1講座で武士道の今日的意義を探るとともに、第2講座で訪問先中国の文化やビジネス慣習などを学んだ。

第1講座の講師は笠谷和比古・国際日本文化研究センター教授。講演テーマ「武士道と現代―日本型組織と個人の自立」に入る前に笠谷氏はまず、1980年以降、諸外国では日本に対する関心が高まり、現代・古典あわせて日本学が盛んであることを紹介。中でも素材の本来の良さを生かす和食が、健康とエコロジーという二つの面から高く評価されていることや、日本文化の自然を活かすコンセプトが世界に受け入れられていることを強調し、伝統文化を学ぶ必要性を訴えた。

また、武士道的組織の強みについては、主君・上位者の指導と命令に、一糸乱れぬ団結力をもって目的達成にまい進する組織ではあったが、ただ命ぜられるままに行動していたわけではなく、忠義・忠節の核心が「諫言」の精神の堅持にあることを指摘。藩主を家臣が強制的に監禁し、改心を求める「押込(おしこめ)」の慣行があったことなども紹介し、武士道の精神を「上にへつらわず、下を侮らず」に尽きると述べた。

また、固定的な身分社会と思われている江戸時代が、実際は有能な下級武士が積極的に抜てきされるという能力主義がうまく機能し、人的資源を大事にした時代であったことや、「藩」という組織が終身雇用、年功序列、企業内組合など、今日の日本型組織の原型としての意義を持つものであることを力説した。

続く第2講座は、11月の海外視察先となる中国を対象に、三潴(みつま)正道・麗澤大学教授が異文化コミュニケーションについて講演した。

麗澤大学中国語学科の教授であるとともに、中国進出大手企業の中国ビジネス要員の育成にも携わる三潴教授は、異文化について考える上で重要な歴史的要因や文化として形成された気質、価値観、視点の違いについて指摘。品物を贈る場合を例に、中国人は「いかに自分の誠意を相手に伝えるか」と考えるのに対し、日本人は「いかに相手に気を遣わせないか」と考えることなど具体例を挙げながら解説した。

また、対中ビジネスにおいて必要な知識として、中国の地域発展戦略や交通インフラ整備など変貌する中国の状況についても詳細に紹介した。

最後に三潴氏は、これからの中国ビジネスの留意点として、情報収集のあり方や交渉の進め方、契約の仕方、事務引き継ぎの仕方など、さまざまな面からアドバイスするとともに、日本企業にも日本人で中国語ができ、中国文化を分析できる人材が必要であると強調した。

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フォーラム21のメンバーは、来月11月14日から5日間の日程で中国・青島と上海を訪問する。青島では、青島ビール工場見学、青島イオン東泰ジャスコ東部店視察、青島市市長表敬訪問、ハイアール社役員との懇談、工場見学、青島大学学生との意見交換などを行う。上海では上海戯劇学院附属戯曲学校を訪問するほか、ジェトロ上海センター長の講演を聴き意見を交換する予定。

【日本経団連事業サービス研修担当】
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