日本経団連タイムス No.2882 (2007年11月1日)

北海道経済懇談会開く

−北海道経済活性化や自立的発展への取り組みなど論議


日本経団連と北海道経済連合会(道経連、南山英雄会長)は10月17日、札幌市内のホテルで「第55回北海道経済懇談会」を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長をはじめとする日本経団連首脳、道経連会員など約150名が参加。「創造的改革の推進により、民間と地域の活力を引き出し、持続的成長を目指す」を基本テーマに、北海道経済の活性化や自立的発展に向けた取り組みなど、北海道が抱える課題を中心に意見を交換した。

開会あいさつした道経連の南山会長は北海道の経済情勢について、最近は足踏み感がみられ、雇用情勢、所得といった面で全国との格差が広がっているなど依然厳しいとの見方を示した上で、北海道経済活性化のために、産業構造の転換に向けたものづくり産業の育成・振興に取り組むとともに、来年7月の北海道洞爺湖サミットを絶好のチャンスととらえ、食と観光という北海道ならではの魅力を全世界に発信していきたいと述べた。

高橋はるみ北海道知事の来賓あいさつに続いて登壇した御手洗会長は、北海道洞爺湖サミットの効果に期待感を示すとともに、北海道が先駆的な試みを通じ、熱心に取り組んでいる道州制に言及。道州制の導入は究極の構造改革であると同時に、地域の自立を促し、地域経済を活性化する最も効果的な手段であるとの考えを示した。

■活動報告

第1部では日本経団連から、張富士夫副会長が今後の税制のあり方と平成20年度税制改正、池田弘一評議員会副議長が道州制導入、草刈隆郎副会長が企業倫理月間をテーマに、それぞれの取り組みについて報告。法人実効税率の引き下げやイノベーション促進税制の維持・拡充への働き掛け、道州制の導入に向けた第2次提言取りまとめへの動きや各地での道州制シンポジウムの開催、企業倫理月間(10月)中のトップセミナーの実施など、最近の活動を説明した。

一方、道経連からは、林光繁副会長が「北海道洞爺湖サミット開催を活用した北海道の取り組み」について報告。道経連ではアフター・サミットを展望し、環境をキーワードとした新たな地域ブランドを創出するとともに、国内最大級のテクノフェアや環境会議といった国際コンベンションの定期的開催に向けて、企画と誘致活動を推進していくと述べた。

次に中井千尋副会長が「地域主権型社会構築に向けた取り組み」について説明。道州制特区推進法に基づく新しい分権の仕組みを活用し、国に対して産業や経済の振興など、企業活動に密着した分野の権限委譲を実現していくために、道庁とも連携して提案活動を行っていくとの考えを示した。

また、坂本眞一副会長は「地域の競争力強化に向けた社会資本整備への取り組み」について報告。北海道の経済的自立・活性化のためには、交通インフラの整備が不可欠であることを指摘し、北海道新幹線の札幌延伸、新千歳空港の国際拠点空港化の促進、高規格幹線道路の整備促進に向けて、取り組みを強化していきたいと述べた。

北海道の抱える課題で意見交換

■自由討議

第2部の自由討議では、道経連側から、(1)地球環境問題に関して、北海道は高緯度低温型の欧州・北米などの国の中でのトップランナーをめざしていくべきである(藤原慶夫常任理事)(2)大都市と地方で税収が偏在しやすい法人住民税と法人事業税を是正すべきである(山口博司副会長)(3)北海道の観光における課題は、宿泊施設や食事に対する満足度の問題、外国人観光客に対する受け入れ環境整備の遅れ、個人旅行客増加のトレンドに対応した多様な商品の不足などである(戸田勇三常任理事)(4)基幹産業である農業の国内・国際競争力強化、食関連産業の競争力確保が北海道の経済活性化には不可欠である(横山清副会長)(5)工学系の知識と経営センスの両面を持つ、ものづくり企業の現場で役立つ人材を育成しようとしている地元の高専や大学の取り組みに期待する(井上一郎常任理事)(6)農水産物の移出や製造業の振興に欠かせないインフラは、港湾、空港、高速道路、鉄道といった物流基盤であり、広域分散型社会の北海道においては、これらのより有機的なネットワーク化を進めていくことが必要である(山本伸一理事)――との発言があった。

これに対し、日本経団連側は、指摘された事項の取り組みを説明した。すなわち、(1)ポスト京都議定書における地球温暖化防止のための国際枠組みとして、各国が温暖化防止対策を自ら決定の上、国際的に公約し、その実施状況を一定期間ごとにチェックし、前進させていくことを提案している(古川一夫副会長)(2)国が中心となって財源調整を行っている地方交付税の仕組みに代わるものとして、道州間で主体的に財政調整を行う地方共有税の導入を提案している(氏家純一副会長)(3)北海道洞爺湖サミット、北京オリンピックなどの世界的イベントを活用して、北海道の豊かな自然を組み込んだ観光商品を開発し、欧米、極東ロシアの旅行者を多数誘致できるよう期待する(佃和夫副会長)(4)農地の所有と利用を分離し、農地の有効利用を徹底した上で、農業経営の高度化・多角化や新規参入を促進し、多様で経営感覚に優れた担い手を確保するとともに、農業経営の規模拡大と農地の集積を支援し、経営の効率化と生産性の向上を図っていくことが重要である(米倉弘昌副会長)(5)産学連携による高度IT人材の育成に向けたモデル拠点づくりを進めており、産業界が求める高度IT人材像を明確化した上で、大学と協力し、カリキュラム・教材の共同作成、企業人講師の派遣、インターンシップの受け入れなどを実施している(古川副会長)(6)高速道路はネットワーク状に整備されてこそ有効に機能し、周遊型観光推進や生産活動活性化、雇用創出などの効果をもたらすほか、災害時の緊急物資・人員輸送を担う役割が期待されるので、今後は国と高速道路会社が、徹底したコスト削減を図りながら、責任をもってネットワークの整備を進めていくことが求められる(草刈副会長)――と応じた。

総括の中で御手洗会長は、来年4月に東京で各国経済団体トップによるG8ビジネス・サミットを開催し、環境、イノベーション、アジアをテーマに論議した結果を、北海道洞爺湖サミットに反映させたいとの考えを示した。

◇◇◇

懇談会に出席した日本経団連首脳は18日、乗用車・商用車ならびに産業用・建設機械用・船舶用の湿式摩擦材(クラッチ部品)などのメーカであるダイナックス(千歳市)を訪問、同社の生産ラインや企業内託児所である「こどもくらぶ」などを見学した。

【総務本部総務担当】
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