日本経団連タイムス No.2883 (2007年11月15日)

国際労働委員会政策部会を開催

−インド企業人事労務管理者と懇談/インドの労働経済事情で講演聴取


日本経団連は10月31日、東京・大手町の経団連会館で国際労働委員会政策部会(立石信雄部会長)を開催し、「インドの労働経済事情」について専門家の講演を聴取するとともに、インド企業の人事労務管理者との懇談を行った。同部会ではまず、日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所研究員の太田仁志氏から「インドの労働経済事情」についての講演を聴取した。

太田氏は冒頭、インド経済について、2003年ごろから好調を維持し、特に第3次産業がGDPの成長を牽引していると指摘。インド政府の労働政策については、1980年代に計画経済の下で構築された「社会主義型社会」における、労働者の絶対的権利の保護という政策が続いており、経済と社会のバランスがとれた成長をめざす現政権においても、労働者保護的なスタンスは根強いと述べた。また、労働争議件数の推移をみると、ストライキ、ロックアウトとも数は多いが、近年激減の傾向にあり、労働組合の相対的弱体化など、労使関係の力の変化もみられると述べた。

続いて、NICC(日本経団連国際協力センター)の短期招聘プログラムに参加するため来日しているインド企業の上級人事労務管理者14名と、部会委員との間で、インドにおける人事労務管理に関する懇談が行われた。

まずインド側から、(1)優秀な人材の採用・定着策として、福祉の充実や社内研修機関の整備などを図っている(2)最近の急激な賃金上昇への対応については、賃金の上昇を生産性の向上にリンクしたものになるよう努めている(3)硬直的といわれる労働法制については、近年必要に応じて修正が加えられており、今後企業はコンプライアンスを一層重視した経営が求められている――との解説・報告がなされ、活発に質疑応答が行われた。

この後、自由懇談に移り、部会委員側から「多様な言語を持つインド企業社会の中で、どのようなコミュニケーションを行っているのか」「企業イメージやブランドについてどのように考えているのか」などの質問が出された。

これに対してインド側からは、「使う言語が異なっていても、企業における価値観やビジョンを共有することが大切。社内メールや印刷物なども活用し、コミュニケーションの風通しを良くして、個々の社員が会社に対していかに貢献していくかが重要であるということを、社員にきちんと伝達することが肝要である」「企業ブランドとは、顧客に対して発信している企業のイメージである。例えば公正な取引を行っているか、社員の潜在的能力を伸ばしているか、CSRをきちんと行っているかなどが挙げられる。インドにおいても企業の社会に対する責任は大きいと考えられており、CSRは企業のブランドにとっても重要である」といった意見が述べられた。

最後にインド側から「日本もインドも、企業社会の中に文化が深く根付いており、『人間の顔』を持って事業を行っているという点で共通していると感じた。日本でもインドでも、優れた組織では、事業運営において同じアプローチを取っていると思う」という感想が示された。

【労政第二本部国際労働担当】
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