日本経団連タイムス No.2884 (2007年11月22日)

連合との懇談会開催

−若年者雇用などで意見交換


日本経団連は9日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、高木剛会長)との懇談会を開催した。日本経団連からは御手洗冨士夫会長はじめ西室泰三評議員会議長、副会長、評議員会副議長らが、連合からは高木会長はじめ副会長や事務局長ら、合わせて35名が参加した。今回の会合では、(1)若年者雇用、パート労働等(2)ワーク・ライフ・バランス、少子化対策(3)税・社会保障の一体改革――をテーマに意見交換を行った。

会合の冒頭、御手洗会長は、健全な労使関係を堅持することが必要であるとの考えを示すとともに、懇談のテーマである若年者雇用問題に触れ、「ジョブ・カード制度等、雇用対策への積極的な協力を会員企業に呼び掛けている」と、現在の取り組み状況について述べた。

続いてあいさつした連合の高木会長は、定期大会で確認した運動方針の最大の特徴は「非正規雇用の問題を柱としたことである」と述べ、「非正規労働センター」の立ち上げについて言及するとともに、処遇改善に向けた企業側の協力を求めた。

両会長のあいさつの後、まず、若年者雇用、パート労働等について意見交換を行った。

連合からは、(1)改正パートタイム労働法に基づいた均衡処遇の推進(2)違法な派遣・請負の撲滅(法令順守)(3)非正規労働者の正規雇用への転換(4)生産性上昇率に見合った賃金の引き上げ(5)労働者が生活できる最低賃金水準の実現――等、雇用・処遇面での改善などを求める意見が出された。

一方、日本経団連は、(1)ジョブ・カード制度を実効性あるものとするためには組合員の協力は不可欠(2)自らの意思で積極的に派遣を選択している人たちのために労働者派遣制度を全否定しないようお願いしたい(3)雇用形態が多様化する中でコミュニケーションが重要であり労使で取り組む必要がある――など雇用管理改善は労使共通の課題であるとの認識に立ち、組合側に理解・協力を求めた。

ワーク・ライフ・バランス、少子化対策については連合から、(1)経営者団体も働き方を改革し、長時間労働を改善していくという考え方に立つべき(2)割増賃金率の引き上げは時間外労働の抑制に向けた労使の真摯な取り組みにつながる――などの意見が示された。

これに対して日本経団連は、(1)働き方を変え、企業の業績・収入の伸びにつながるといった好循環を実現していきたい(2)仕事と生活の調和は、個々人・ライフステージによって異なる。ワーク・ライフ・バランスの実現には従業員の満足度と生産性の双方を向上させていくという視点が重要――などと述べたほか、生産性向上や仕事と育児の両立支援に向けた取り組みについて紹介した。

税・社会保障については、連合から、(1)所得税の税率構造見直しなど、所得再配分機能の強化を図るべきである(2)地域住民の参加の下、基礎自治体優先の原則を徹底し地方分権を実現する必要がある――などの意見が出された。

一方、日本経団連は、(1)社会保障制度は国民生活の基礎であり、ICT化(社会保障カード、電子私書箱)の推進を通じて高齢化福祉の一翼を担いたい(2)社会保障費の安定的な財源を確保する観点からは、歳出削減を前提としても消費税引き上げが必要と考える。国際競争力強化の観点から法人税引き下げを求めているが、まず税制抜本改革における消費税論議に道筋をつけることが必要である(3)地方と大都市圏との格差是正に向けて研究開発促進税制を拡充させる必要がある(4)地球温暖化問題では、労働組合と経済界が連携して取り組む必要がある――などの考えを示した。

会合の最後、総括あいさつの中で御手洗会長は、「(労使間で)アプローチや方法論が違うとしてもめざすべき社会の姿は同じである」こと、「労働問題は景気状況や会社規模などの事情によってテーマや対象が異なり、きめ細かな対応が必要である」こと、の2点を強調した。

【労政第一本部労政担当】
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