日本経団連タイムス No.2887 (2008年1月1日)

提言「高度情報通信人材育成の加速化に向けて」発表

−ナショナルセンター構想を提案


日本経団連は12月18日、提言「高度情報通信人材育成の加速化に向けて−ナショナルセンター構想の提案−」を発表した。同提言は、現在、日本経団連の情報通信委員会高度情報通信人材育成部会(山下徹部会長)が中心となり、産学官連携の下に推進している高度情報通信人材育成の取り組みを、全国へと展開・加速するため、その具体的方策を取りまとめたものである。

情報通信技術(以下、ICT)は、わが国の企業活動および国民生活にとって不可欠なインフラであり、産業の国際競争力や安全保障等の国力に大きな影響を及ぼすまでになっている。しかし、産業界が求める高度ICT人材は質・量ともに不足しており、日本の大学が輩出する人材との間に大きなギャップが存在している。

提言の第1章では、以上のようなわが国の現状を述べ、第2章では、こうした状況を踏まえた上での日本経団連と政府のこれまでの取り組みを紹介している。日本経団連は、2005年6月に公表した提言の中で、新たに「先進的ICT教育拠点」を設立することを提案した。そして、そのモデルを実証・確立するため、筑波大学、九州大学を重点協力拠点と位置付け、産学連携を進め、今年4月から、2大学の大学院修士課程において、産業界のニーズに対応した新たな高度ICT人材育成のモデルコースが開講の運びとなった。現在も、産業界から企業のトップ人材を教員として派遣し、コースの運営、カリキュラムや教材開発等を共同で実施し、大学教育では前例のない大規模な産学連携を推進している。

第3章では、このような高度ICT人材育成の取り組みを加速化し、全国に展開する上での課題について述べている。ICTが社会基盤を支える重要な役割を担っており、その人材育成が全産業分野の国際競争力に直結しているという認識が社会的に欠如していることを強調。その上で、産業界と大学側が抱える問題を指摘し、協力企業の自発的努力の上に成り立っている日本経団連の高度ICT人材育成の取り組みを持続可能にするための体制を、国家戦略として確立する必要があるとしている。

第4章では、その具体的方策として、日本経団連が推進している高度ICT人材の教育モデルを全国の大学に普及・拡大するため、推進母体となるナショナルセンターを設立することを提案している。韓国は、かつて金融危機に直面した時、ICT産業により国を立て直すため、政府自らがICT教育のナショナルセンターであるICU(情報通信大学)を設立し、優秀な学生を輩出する体制を確立しており、それが同提言のモデルにもなっている。

同センターでは、実践的ICT教育の研究、モデルカリキュラムの策定、大学と支援企業を結ぶハブとしての役割、教員の養成等を行い、これらの機能の有効性を実証するための場として、ICTと他の専攻を一緒に勉強できる融合型専門職大学院を附設することも提案している。

第5章では、ナショナルセンターと融合型専門職大学院の設立に向けたタイムフレームを提示し、準備作業への着手が急務であることを示している。

そして第6章では、同提言で提唱する教育体制を確立することが、ICT分野での国際競争におけるわが国の劣勢を挽回する方策であることを強調し、産学官の一致団結を呼び掛け、締めくくっている。

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日本経団連は12月20日に、「第3回高度情報通信人材育成に関する産学官連携会議」を開催し、産学官のICT人材育成関係者が集まる中、今回の提言の趣旨を説明し、構想実現への協力を呼び掛けた。

【産業第二本部情報通信担当】
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