日本経団連タイムス No.2889 (2008年1月17日)

EPAシンポジウムを開催

−今後のわが国のEPA戦略を議論


日本経団連と経済広報センター(御手洗冨士夫会長)は、12月18日、東京・大手町の経団連会館で、シンポジウム「グローバル化のもとでのわが国のEPA戦略を探る―持続的成長の実現に向けて―」を開催した。当日は、日本経団連会員、経済広報センター社会公聴会員、各国大使館関係者ら360名が出席した。

■ 御手洗会長、甘利経済産業大臣あいさつ

開会あいさつで御手洗会長は、EPA(経済連携協定)は、世界、特に東アジアのダイナミズムを取り込み、わが国が持続的な成長を遂げるために不可欠であるとし、その推進の意義を強調した。

続いて、来賓としてあいさつに立った甘利明経済産業大臣は、アジアならびに米国・EUなど先進国とのEPAを通じて海外との「つながり」を強化することによって、少子・高齢化に直面するわが国の経済成長を実現していく、との決意を表明した。

■ マイケル・グリーン米国戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日本部長基調講演

基調講演の中でグリーンCSIS上級顧問・日本部長は、アジアにおける米国の最も重要なパートナーは世界第二の経済大国日本であり、米国は日米EPA構想を真剣に受け止めるべきとした。関税撤廃に加え、規制・ルールの調和を実現することによって、両国がグローバルなルールの形成に貢献することが可能となり、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の円滑な実現にも寄与するとした。その上で、両国政府や経済界が今から議論を開始することが有益であり、首脳レベルの政治的意思が必要であると指摘した。

■ パネルディスカッション

続いて行われたパネルディスカッションにおいて、グリーン氏は、日本の構造改革の推進、内需の拡大、対内直接投資の拡大につながる日米EPAは、米国企業にとっても有意義であると述べた。また、FTAAPについて、アジア太平洋地域の主要国が既に実現したEPA・FTA(自由貿易協定)を基盤に現段階でも検討を進めることが可能であると指摘した。日本のEPA戦略に関しては、農業分野の取り扱いがカギを握っているが、それが重要なウエートを占める日豪EPA交渉が開始されたことに注目している、と述べた。

豊田正和経済産業審議官は、今後わが国は、アジアとともに発展すべく、ボーダーレスな地域の形成をめざし、先般妥結した日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定を基にASEAN+6(日・中・韓・印・豪・ニュージーランド)の東アジア包括的経済連携(CEPEA)を実現していくとした。また、FTAAPについても長期的課題として取り組むと述べた。さらに、大消費国である米国、EU等とのEPAを進めるべきであり、関税、知的財産、環境、投資などの分野で世界最高レベルの規律を確立する必要があるとした。農業分野の自由化については、交渉相手国とともに知恵を出し合うことが重要と述べた。

渡邊頼純慶應義塾大学総合政策学部教授は、わが国EPAの意義として、多角的な貿易自由化の補完、国内改革を通じた国際競争力の強化、密接な関係にある国々との経済的紐帯の強化による総合的な安全保障への貢献の3点を挙げた。その上で、経済界への期待として、EPAをより積極的に支援すること、特に日豪EPAの実現に最大限努力する必要があると指摘した。

米倉弘昌日本経団連副会長・経済連携推進委員長は、わが国のEPAは最近1年間でかなり進展したものの、交渉中のものを含めても貿易額の約3分の1をカバーするにすぎず、これからが正念場であるとした。その上で、東アジアにおける「共同体」の構築、わが国外交の基軸である米国や、韓国が先行するEUとのEPAの重要性を強調した。また、緒についたばかりの国内農業構造改革とEPAを両立させるには時間が必要であり、日本経団連としても、政府や農業関係者と議論しつつ、豪州はじめ各国にも理解を求めていることを紹介した。

【国際第一本部貿易投資担当】
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