日本経団連タイムス No.2889 (2008年1月17日)

日本経団連グリーンフォーラム、前期の振り返り講座開催


日本経団連グリーンフォーラムは先ごろ、前期の振り返り講座を行った。当日は、アドバイザーのひとりである大久保幸夫リクルートワークス研究所所長を講師に迎え、まず、6月講座の復習として「キャリアデザインの方法」のポイント説明が行われた。

それによると、キャリアを分析する場合、多くは五つに分けられる。第1は、転機という視点からキャリアを見る「トランジション論」。これは仕事の内外で起こるいくつかのイベントを分岐点として、それを乗り越えるプロセスをキャリアとしてとらえるものである。第2は、成長の段階からキャリアを見る「生涯発達論」。スイスの心理学者ユングの「人生の正午論」に代表されるもので、これは40歳ごろを人生の正午と名付け、理想の価値が逆転した個性化が始まり、有限性を自覚するようになるというもの。

3番目は、不確実な旅としてキャリアを見る「意思決定論」。先行きが長く、見えない中で、そのような状況を前向きに受け入れながら直感的な考えで意思決定をしていく方法である。第4は、キャリアは一定の時間をかけて収束していくとする「キャリアアンカー論」。大久保アドバイザーはこれを、キャリアの前半はいろいろなことを経験する筏下り、後半は一つのゴールを設定し、それをめざす山登りであると説いた。第5は、熟達のプロセスとしてキャリアを見る「プロフェッショナル論」。日本古来の「守破離」の概念に似て、先人が築き上げた基本を習得する時期、それを現実に即したものにするため、これまでのあり方を粉砕し新しいものを開発する時期、そして型を大事にしつつも、そこから離れ再構築していく時期と分け、キャリアは段階を経て成長していくものとした。

参加者はそれぞれ、事前準備として自らが「興味ある経済人」を一人選び、その人物に関する情報をさまざまな媒体を通して収集した。そして、講座前半の説明を受け、その人物が事前に挙げた五つのキャリア論のうちどの理論に当てはめると考えやすいのか、また、そこから自分自身のキャリアへの関与としてどのようなものを導くことができるかをその場で記述し、与えられた3分間で発表した。

最後に、大久保アドバイザーから総括として、「キャリアデザインの難しいところは、自分のキャリアをいかに冷静に分析するかということ。キャリアには幾度かの転機が訪れる。問題は、いま自分が転機にかかっていることを認識せず、うすうす気付いてもしっかりと認識するに至らないことである。今回の振り返りでは、興味ある経済人の事例をロールモデルとして見ることによって、あるキャリアの枠組みから一般化された理論を知り、転機の迎え方を知ることが大切。見えてくる転機認識を通して、自分自身を振り返ってみてほしい」と参加者の自覚を促した。

【日本経団連事業サービス研修担当】
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