日本経団連タイムス No.2890 (2008年1月24日)

中南米地域駐箚大使との懇談会開催

−中南米地域の政治・経済情勢などを聴取


日本経団連は12月21日、東京・大手町の経団連会館で中南米駐箚(ちゅうさつ)大使との懇談会を開催し、三輪昭中南米局長から、中南米地域における外交政策課題について、また、中南米8カ国の大使から中南米諸国の政治・経済情勢について説明を聴いた。

佐々木幹夫副会長・中南米地域委員長のあいさつの後、外務省の三輪中南米局長が中南米諸国は豊富な鉱物資源に恵まれ、生産輸出拠点としても注目を集めていることから、今後さらなる発展が期待できるとの見通しを示し、実例として成長を続けるメキシコの自動車・部品、ブラジルの鉄鋼などを紹介した。また、メキシコ、チリとの間で発効しているEPA(経済連携協定)について、2005年に日墨EPAが発効後、両国間の貿易、投資は飛躍的に拡大していると述べるとともに、チリについても効果が表れるだろうとの見通しを示した。さらに、中南米地域は日本の技術力に高い関心を持っており、さまざまな大型プロジェクトが実施されていることに触れ、外務省としても関係機関と協力し、中南米における日本の経済的な存在感の維持・拡大に貢献したいとの意向を示した。

最後に三輪局長は、中南米諸国との良好な関係の構築は、日本が国際社会でリーダーシップを発揮する上で重要であると強調した。

続いて、出席した大使が地域情勢に関して報告した。
小野正昭駐メキシコ大使は、日墨EPA発効から2年半が経過し、メキシコにおける日本の存在感がますます高まったことで、貿易量は75%、日本からの投資も3倍に増加したと述べた。また、メキシコは環境・エネルギー分野への関心が高く、太陽光、水力、バイオなど再生可能エネルギー開発の分野でも日本の技術で協力できるだろうと述べた。

島内憲駐ブラジル大使は、ブラジルの中長期的な政治的安定性に注目すべきであるとし、ブラジルは先進国並みの低インフレの下、成長を続けていると説明した。また、日伯の経済関係は資源中心の相互補完関係から、高付加価値、高度技術分野に移行していると指摘。08年の日伯交流年をきっかけに政治、経済、文化などあらゆる分野で両国関係にはずみがつくことに期待を示した。

次に林渉駐チリ大使は、チリ経済は物価上昇や恒常的なエネルギー不足が消費や生産にマイナスの影響を与えており、弱含みだが、銅価格の高騰により経済成長を維持していると説明。今後の課題は、エネルギー不足解決のためのビジネスに加え、付加価値を高めて製品を輸出する仕組みを国内で整備することであり、新たな投資や環境保護政策に期待したいと述べた。

永井愼也駐アルゼンチン大使は、アルゼンチン経済について、成長率は6%と依然高く、競争力のある為替レート、財政黒字や貿易黒字の維持、財政の拡大をめざしていると説明。自動車や二輪車で日本の直接投資が活発化し、貿易量も拡大していることを紹介した。その上で、今後は特に資源分野で二国間の経済関係が一層拡大するのではないかと述べた。

また、下荒地修二駐ベネズエラ大使は、チャベス大統領の独裁の印象が強い同国だが、憲法改正の国民投票の結果を見ると、民主主義のルールが適用されていると指摘した。経済について、2ケタのインフレ、政府による為替管理や外貨割当、食料品価格統制等介入強化といった不安材料に加え、原油高による潤沢な資金をバラ撒き政策に使っているため、石油開発や生産に十分な投資が行われず、生産量が減少傾向にあり、今後注視していく必要があるとした。

続いて寺澤辰麿駐コロンビア大使は、コロンビアは治安面で問題を抱えている印象があるが、状況は大きく変化していると指摘。(1)民主化と治安対策(2)投資の促進による経済発展(3)社会政策目標の達成等を実現し、06年の成長率は6.8%を記録し、直接投資は5年で2.5倍に増え、教育や医療も充実していると説明した。その上で、日本の投資は低水準にとどまっており、貿易のシェアも減少しているとして、両国の経済関係の一層の発展に意欲を示した。

石田仁宏駐ペルー大使は、社会階層や貧富の格差に対して適切な政策を実施しない限り、ペルーに民族主義的な政権が誕生する可能性もあるとの認識に立ち支援することが重要と指摘。その上で、経済的には資源確保の観点からも重要な国であり、ペルー政府の協力や日本ペルー経済協議会などを活用し、両国関係を進展させていきたいと述べた。

最後に山口英一駐コスタリカ大使が、中米諸国情勢について説明。DR−CAFTA(米・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定)の締結により、投資環境の改善が期待できること、知的財産の保護や貿易保険の自由化などが日本企業の利益になることなどを指摘。中国や韓国企業などと異なり、日本企業の中米からの撤退傾向が目につくことを挙げ、中米地域を再度見直すことの重要性を強調した。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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