日本経団連タイムス No.2891 (2008年1月31日)

渡海文科相との懇談会を開催

−教育再生への取り組みなど、今後の文教政策で意見を交換


日本経団連は24日、東京・大手町の経団連会館で、渡海紀三朗文部科学大臣との懇談会を開催し、これからの文教政策について意見交換を行った。

はじめに、三村明夫副会長・教育問題委員長からあいさつがあり、この中で、「教育は100人いれば100通りの意見があり重点課題を絞り込むことが難しいが、教育再生は待ったなしであり、優先順位を付けて着実に取り組むべきだ」と発言があった。続いて、渡海大臣が、「関係各方面の意見を十分に聴きながら施策を進めたい。産業界との意見交換は非常に重要であり、本日は貴重な機会だ」と述べ、これに引き続き教育に関する文科省の施策を説明した。この中で、産業界に対し、『学校支援地域本部事業』(地域住民などが学校支援ボランティアとして学校運営に協力するための組織)に対する企業人派遣、インターンシップ受け入れなど若者のキャリア教育・職業教育への支援、就職採用活動時期についての配慮、有害情報対策としてテレビ番組のスポンサーとなる際の配慮などについての要請があった。

この後行われた自由懇談において、蛭田史郎教育問題委員会共同委員長は、「企業も社会的責任として、引き続き教育再生への取り組みを支援する方針であるが、文部科学省においても、学校と企業の連携促進に向けて教育界の意識改革を促進すべきだ」と述べた。併せて、教育行政についての日本経団連の意見を説明し、この中で、公徳心を育む教育や日本の伝統文化に関する教育が教育現場で確実に実施されるよう要請するとともに、今年度末までに策定される教育振興基本計画に反映すべき課題として、(1)学校選択制や選択結果に基づく予算配分など学校が教育の質的向上に向けて切磋琢磨する環境整備(2)学校(校長)や地方への権限委譲(3)教員の質の向上に実効ある教員免許更新制の実現ならびに教員評価と処遇への反映(4)教育と企業の連携促進(5)大学教育の成果を図る客観的な評価指標の導入と評価を踏まえた予算配分――などの施策を挙げた。このほか、教育振興基本計画の施策の優先順位付け、数値目標や達成期限の提示などを求めた。

これに対し、渡海大臣から、「日本経団連の意見は現在の文教政策の方向性とほぼ一致しているが、『競争』は、義務教育段階で導入する場合には多くの問題があり難しい」との発言があった。また、副大臣、政務官からは、「道徳教育、自然体験・社会体験などの活動を通じ倫理観を育む教育に力を入れたい」「企業が学校支援プログラムを数多く手掛けていることを初めて知り大変感心した」「企業が雇用している外国人従業員の子女の教育問題にも目を向けてほしい」などの発言があった。

これに対し、日本経団連側から、企業の教育支援事業の例として、金融教育の教材づくり・講師派遣事業、ポルトガル語の教科書作成・ブラジル人学校への寄付などの取り組みについて説明があった。このほか、「地方への権限委譲を進めることが必要だ。教育委員会制度のあり方について存廃を含め検討すべき」「教育の受け手(保護者)が参画した学校運営を進めることが重要だ」「教育再生会議の提案を教育振興基本計画に反映し、政府一体として取り組む姿を示すべき」「教育振興基本計画に数値目標は必要だ」などの意見が出された。

渡海大臣は閉会の辞の中で、「数値目標は予算の裏付けが必要となるため難しいが、努力する」と述べた。日本経団連と、文科省は、今後とも意見交換の機会を持つことで合意し、懇談会を閉会した。

【社会第一本部人材育成担当】
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