日本経団連タイムス No.2892 (2008年2月7日)

唐英年・香港特別行政区政府政務長官と懇談

−金融サービスセンターとしての香港と日本の関係強化へ意見交換


日本・香港経済委員会(鈴木邦雄委員長)は1月22日、東京・大手町の経団連会館に、香港特別行政区政府のナンバー2である唐英年(ヘンリー・タン)政務長官を迎え、世界有数の金融サービスセンターとして存在感を増す香港と日本との関係について懇談を行った。

席上、鈴木委員長は、昨年、日本で開催された第29回経済合同委員会および香港返還10周年記念シンポジウムに触れ、特に、「潜在競争力世界一」と評価された香港の魅力をテーマに、350人が集まった記念シンポジウムを高く評価した。

香港の競争力の源泉

これに応えて、唐政務長官は、香港は1997年に中国に返還されて以来、通貨危機や62カ月の長期デフレ、SARSなど数々の困難や課題を乗り越えて成長軌道に乗り、04年から06年にかけては平均7.7%の高い経済成長を遂げたことを強調した。

また、その主要な理由として、唐政務長官は、中国本土との緊密な協力を挙げ、「香港は、中国との関係で一国二制度を採用しており、中国の30年間で平均9%という驚異的な経済成長を存分に取り込める立場にある。また、中国にとっても、香港が『一流の金融サービスセンター』としての役割を果たすことは、さらなる成長を果たす一助となる」と発言した。

香港・中国の成長は持続するか

懇談においては、現在耳目を集めているサブプライムローン問題が、香港の実体経済にどの程度影響を与えるかについて質問があった。唐政務長官からは、香港の個々の金融機関に関しては確かに悪影響があるが、香港全体が受ける影響はそれほど大きくなく、香港の金融システムはこの問題に耐えることができる、との展望が示された。

続いて、同じくサブプライムローン問題の影響において、中国の持続的成長が停滞する可能性についての質問が出された。唐政務長官は、中国にとってサブプライムローン問題自体の影響は小さいとの見方を示した。他方で、今後の成長について、顕在化している沿岸部と内陸部の収入格差是正を図るため、中国政府はマクロ経済的手段で成長率を鈍化させようとしていると紹介した。これにより、今後の成長率は最も低い場合、年6〜7%で推移すると見られ、ブレーキがかかることは否めないとの認識を示した。

しかし、唐政務長官は、「ブレーキはかかるものの、中国は依然他国に比べて高い成長率を維持している。サブプライムローン問題で停滞する米国経済が世界経済に与える影響は、中国の成長と、同じく高い成長を続けるインドにより埋め合わせることができる」との考えを述べた。

環境問題への対応が求められる香港

最後に、鈴木委員長から、金融サービスセンターとしてニューヨークやロンドンと並び称される香港だが、その立場を確固たるものにするためには、深刻な大気汚染や水質汚染への対応が急務であるとの見解が示された。その上で鈴木委員長は、日本が持っている環境関係の先進技術を活用し、この全世界的な問題に対して、香港や中国本土と協調して対応していくべきであり、次回の香港・日本経済合同委員会でも主要議題として取り上げたい、との意見を表明、唐政務長官から全面的な賛意が示された。

【国際第二本部アジア担当】
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