日本経団連タイムス No.2893 (2008年2月14日)

アジア大洋州地域大使と懇談

−「各国の経済連携政策」「環境・気候変動」/2テーマめぐり意見交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は5日、日本商工会議所とともに、アジア大洋州地域の在外公館から24名の大使、外務省本省から齊木昭隆アジア大洋州局長らを招き、「各国の経済連携(FTA=自由貿易協定/EPA=経済連携協定)政策」と「環境・気候変動」の二つのテーマについて意見交換を行った。

冒頭、御手洗会長は、日本とASEANの間のEPAはおおむね整ってきたと評価するとともに、インド、中国、韓国、豪州などASEAN以外の地域とのEPAがいまだ課題として残っていると指摘した。

また、気候変動問題では、本格化しつつあるポスト京都議定書の国際枠組みに関する議論について、すべての主要排出国が参加する実効あるものとすべき、と述べるとともに、技術の開発・普及や資金協力により、地球規模で取り組める国際枠組みの構築が重要との認識を示した。循環型社会の構築に向けた取り組みでも、経済界全体で「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」を積極的に推進しており、これらの経験や技術が、地域の環境改善、資源の有効活用に貢献できると語った。

その後、齊木局長から外務省で行われた大使会議の説明があったのに続き、第1セッションでは小島高明豪州大使、重家俊範韓国大使、池田維交流協会台北事務所長から、豪州、韓国、台湾のFTA/EPA政策について説明があった。

小島豪州大使は、日豪EPA交渉の前提として、昨年11年ぶりに政権に返り咲いた労働党のラッド新政権について、環境保護を重視する立場から、日本の調査捕鯨について考え方の相違はあるものの、貿易や安全保障での関係は引き続き良好であると述べた。次に重家韓国大使が、韓国はFTA政策開始が比較的遅かったものの、現在では既にチリなど四つの国・地域とのFTAが発効済みであり、順調に政策を進めていることを指摘。一方、米国とのFTAは批准待ち、EUとのFTA交渉は難しい局面に差し掛かっているなど、今後の課題も存在すると説明した。

第1セッションの意見交換では、鈴木正一郎評議員会副議長からの中国のFTA政策についての質問に対し、中国は輸出市場の多様化や資源確保などの目的で、既に5カ国・地域とFTAを締結し、7カ国・地域と交渉中であるなど、積極的にFTA政策を進めているとの回答があった。続いて大橋洋治評議員会副議長からタイの新政権の外資政策について質問があり、国民の力党を中心とした連立政権は、下院定数480のうち3分の2の320議席以上を押さえて安定的であり、EPA/FTA推進や外資規制撤廃など、開放型の政策を採る可能性が高いとの回答があった。

続く第2セッションでは、環境・気候変動問題につき、堂道秀明インド大使と鶴岡公二地球規模課題審議官が、特に経済界の関心が高いインドと中国の取り組みについて説明した。

両氏によると、インドは、途上国として「共通だが差異ある責任」原則の下、経済成長をより優先する立場から、国別の総量規制採用に反対しており、中国も今後CO2排出量の大幅増が見込まれる。これら2カ国をポスト京都の枠組みに引き入れるために、京都議定書参加国である日本の努力が必要であるとのことであった。

最後の意見交換では、日本経団連の環境自主行動計画の紹介があった。環境安全委員会の吉川廣和廃棄物・リサイクル部会長から、日本企業の企業努力による高水準の環境技術や経験を通じ、地域の環境改善や資源循環システム構築に貢献できるとの発言があった。同委員会の猪野博行地球環境部会長は、日本の産業部門のエネルギー効率は世界最高水準であり、2006年度は1990年度に比べCO2排出量が5.6%減少するなど、大きな成果を上げていることを紹介した。

【国際第二本部アジア担当】
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