日本経団連タイムス No.2893 (2008年2月14日)

中東・アフリカ地域駐箚大使との懇談会を開催

−対中東・アフリカ政策や各地域情勢の報告を聴取


日本経団連は1月22日、東京・大手町の経団連会館で中東・アフリカ地域駐箚(ちゅうさつ)大使との懇談会を開催した。

懇談会では、渡文明副会長のあいさつに続き、まず外務省の奥田紀宏・中東アフリカ局長、木寺昌人・アフリカ審議官が、わが国の対中東・アフリカ政策について説明を行った。この中で奥田局長は、中東が重要な地域であることの理由として、(1)エネルギーの安定確保の観点から日本と中東諸国との二国間関係の緊密化促進の必要性が高まっていること(2)石油価格の上昇に伴う金融力の拡大もあり、中東地域の平和と安定の確保は国際社会の最優先課題のひとつとなっており、わが国の積極的貢献が不可欠であること(3)中東の問題の背後には日米関係が存在しており、その観点からも中東は大切な要素と考えなければならないこと――の3点を指摘。その上で、日本は中東諸国がアジアに目を向けている今こそ、スピード感をもって重層的関係の構築や、人的交流の活発化に努力していかなければならないと述べた。

木寺審議官は、アフリカは天然資源に恵まれていることに加え、人口の多さから考えても長期的に有望な市場であることを挙げ、日本企業の一層の進出に期待感を表明。5月に開催される第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)で3大テーマの一つとして取り上げる「成長の加速化」がアフリカの発展のために重要であることを強調し、そのためには、インフラ整備の拡充と農業の発展が不可欠であると述べた。また木寺審議官は、アフリカ支援のためには官民が一致協力する必要があるとして、オールジャパンによる取り組みの強化を求めた。

続いて、出席した大使が地域情勢に関して報告した。加藤重信・駐ヨルダン大使は、中東の不安定要因の根底にはイスラエルとパレスチナの問題があると指摘し、最新の中東和平の動きについて、両者の並存を前提に国境や難民の帰還、エルサレムの地位等の交渉を行い、2008年末までの解決に向けて努力するという国際社会の取り組みを報告した。

波多野琢磨・駐アラブ首長国連邦(UAE)大使は、GCC(湾岸協力会議)諸国のオイルマネーの動向ついて説明した。現在のエネルギー価格の水準が続けばGCC諸国の経常収支黒字はますます拡大し、世界最大の資金供給源になる可能性があると述べた。また、油価の上昇で得た豊富な資金を産業多角化と将来の世代のための投資の二つに使っていることを指摘、(1)エネルギー関連産業、石油化学などの下流部門、アルミ部門で世界の成長センターになっている(2)インフラ整備も活発で、現在進行中のプロジェクトだけでも世界最大級である――と説明した。さらにアブダビを例に政府系投資ファンドの動向を紹介した。アブダビ投資庁の総資産は推定5000億〜8000億ドル、長期保有を基本とするポートフォリオ投資で、従来の債券中心から株式や不動産などにシフトしている。波多野大使は「アブダビは日本との相互投資、日本企業と提携したアジア投資の可能性を模索しており、政府間でもこれを支援するために、必要な租税協定、投資保護協定の締結を推進しているので、日本企業は、アブダビに投資するのみならず、アブダビの豊富な資金を経営戦略の中で活用してほしい」と要請した。

門司健次郎・駐イラク大使は、イラクの安定と復興は、中東地域ひいては国際社会全体の平和と安定に重要であることから、わが国も積極的に支援を行っていると述べ、自衛隊とODA(無償、円借款、技術協力)を組み合わせたわが国の人道復興支援に対し、イラクは非常に感謝し、高く評価していると説明した。その上で、「イラクは2600万の人口と石油資源を有し、教育水準も高い。またまじめな国民性で、治安さえ良くなればポテンシャルは相当高いと思う。ぜひ皆さんの協力を得て、先方の期待する日本企業の進出をお願いしたい」と要請した。

石川薫・駐エジプト大使は、北アフリカはイスラム、アフリカ、地中海沿岸諸国の三つの側面を持つとし、他のアフリカ諸国に援助を供与する側であるとともにEUとの深い結び付きを指摘した。また、エジプトの特徴として穏健なイスラム国家、世俗国家、共和制を挙げ、同国の経済について、(1)開放政策に基づいて経済成長率は3年連続7%を達成していること(2)経済成長の柱はいずれも年間で石油・ガスの輸出100億ドル、観光80億ドル、出稼ぎ労働者の送金71億ドル、スエズ運河収入42億ドルであったが、今や製造業の比率が増えていること(3)農業の比較優位は高いこと――などを説明した。

古屋昭彦・駐南アフリカ大使は「アフリカ全体で日本からの輸出は全世界への総輸出の1.4%、アフリカから日本への輸入は2.3%にとどまっており、まだまだ潜在的可能性があると期待している」と述べた上で、南部アフリカ共同体(SADC)諸国で今後開発が期待されるレアメタルなどの鉱物資源の国別賦存状況を紹介した。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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