日本経団連タイムス No.2894 (2008年2月21日)

「成長創造」テーマに関西会員懇談会

−関西の潜在力強化し日本の新たな発展に向け意見交換


日本経団連は6日、大阪市内のホテルで関西地区の企業会員の代表者約350名の出席を得て、関西会員懇談会を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長、勝俣恒久副会長、張富士夫副会長、中村邦夫副会長、森田富治郎副会長、槍田松瑩副会長、榊原定征副会長、古川一夫副会長、奥田務評議員会副議長が出席し、「成長創造〜関西の潜在力を強化し日本の新たな発展につなげる」のテーマの下、会員代表者と種々意見交換を行った。

冒頭のあいさつで御手洗会長は、年初に公表した提言「成長創造−躍動の10年へ」の概要を説明。同提言では、今後10年以内に世界最高水準の所得実現をめざし、イノベーションの加速、EPA(経済連携協定)締結の促進などの五つの政策手段と、「低炭素社会の確立に向けたイニシアチブの発揮」「道州制につながる広域経済圏の形成」などの三つの具体的プロジェクトを掲げていると述べた。このうち、道州制の実現について御手洗会長は、「地域としての特性を活かし、産業振興に向けたインフラを整備することで、企業経営と同様、地域経営という観点からの国際競争力が強化される。その結果として実現する道州制は、地方分権改革や国・地方を通じた行財政改革などを実現する『究極の構造改革』であり、地域の自立を促し、地域経済を活性化する最も効果的な手段である」との考えを示した。

■ 活動報告

続いて、日本経団連の最近の活動のうち、まず「税制改正を巡る動向」について張副会長が、「消費税を含む税制抜本改革を平成21年度税制改正で実現するよう広く世論を喚起していきたい」と理解と協力を求めた。次に、森田副会長は「少子化対策の推進」に関連して、「子育て支援の推進は企業にとって単なるコストではなく、将来への投資である」との考えを示し、企業の取り組みをさらに進めていく必要性を訴えた。

また「今後の労使交渉の基本姿勢」について勝俣副会長は、「賃金をはじめとする総額人件費の決定に際しては、自社の支払能力を基準に考えることが基本であり、あくまで個別労使で判断すべき」「一時的な業績改善は賞与・一時金に反映させることが基本」との考えを示した。槍田副会長は「EPAの推進」について、「今後、日米、日EUのEPAを含め、スピード感をもって質の高いEPAを締結するように、引き続き関係方面に働き掛けていくとともに、東アジアにおける経済連携ネットワークの構築に向けて鋭意取り組んでいく」と説明した。

経済発展・活性化策など

■ 意見交換

意見交換ではまず、水越浩士・神戸製鋼所会長が、「陸・海・空総合交通体系の整備」や神戸におけるさまざまな取り組みについて意見を表明。「今後関西が一層の経済発展を遂げていくには、関西国際空港や神戸空港、神戸港を有機的につなぐ陸・海・空総合交通体系の整備が不可欠」と述べるとともに、神戸において、(1)日本初の医療産業クラスターづくりを進めていること(2)国家プロジェクトである次世代スーパーコンピューターの立地が決まり、支援財団が設立されたこと(3)5月の2008年サミット環境大臣会合に合わせて「環境フェア」を開催すること――などを紹介した。

次に松本正義・住友電気工業社長が「関西経済活性化に向けて注力すべきこと」について発言。首都圏を中心とした一極集中型の発展をめざすことをやめ、地域の魅力を創出・再構築すべきであるとの考えを示した。そのために、関西では24時間空港としての関西空港の活性化や、文化遺産・歴史遺産の活用による観光振興、関西に拠点を置く各企業がオンリー・ワンに挑戦し、高い競争力を維持することにより、活発に事業展開をすることが、関西経済を活性化させることなどを強調した。

角和夫・阪急電鉄社長は「都市開発に向けた取り組み」について、「これからは、公共交通ネットワークの拠点である駅を中心に、環境問題を意識したコンパクトなまちづくりをめざすべき」「梅田北ヤードの開発を、関西再生をリードする重要拠点にしたい」との意見を述べた。牧野明次・岩谷産業社長は地球環境問題の解決のためには、革新的な環境・エネルギー技術の開発が必要とした上で、同社において進められている「究極のクリーンエネルギーである水素エネルギー」の利用に向けたさまざまな事業を紹介。一昨年春、堺市にわが国最大の液体水素プラントを稼動させたこと、水素ステーションの建設・運用や家庭用燃料電池の大規模実証事業を行っていること、新規水素需要創出に取り組んでいること、水素エネルギーの普及・啓発活動に注力していることなどを挙げた。また井上礼之・ダイキン工業会長は関西経済が抱える課題を指摘。「グローバルな視点での成長戦略が必要」「全国一律の発展モデルではなく、地域ごとの特色ある発展を志向すべきであり、道州制を早急に実現すべき。その際には、地域発の道州制導入に向けた議論を活発化し、国民の理解を深める必要がある」と述べた。

このような会員の意見に対し、日本経団連側からは、「地域の活性化にあたっては、地域の企業立地競争力と、地域経済の発展基盤となる産業の強化が重要である。今後、立地整備のあり方や観光資源などの地域固有の魅力あるものを内外にどう伝え、商品化し、産業化していくかを検討するとともに、地域活性化に向け積極的に取り組む」(榊原副会長)、「港湾や空港といったインフラを効果的に活用するためには、各インフラ間を相互に接続する高速道路・鉄道などのネットワーク充実が欠かせない。また、物流の効率化という観点からも物流におけるボトルネックの解消を政府に要望している」(古川副会長)、「地球温暖化問題に関しては、現在、ポスト京都議定書の国際枠組みづくりに重点的に取り組んでいる。総量削減目標を課すとしても、トップダウンではなく、エネルギー効率をベースに、各国が自ら目標を設定する方式とすることが重要である」(奥田評議員会副議長)、「道州制に関する国民の関心を深めることは、道州制導入の大きな推進力になる。そのためには、道州制の導入によって地域住民にどのようなメリットがあるかをわかりやすく説明していくことが重要である」(中村副会長)などの意見が示された。

■ 自由懇談

自由懇談では会場から、「関西における広域連携がうまく機能し、道州制の先駆けとなればよいと考える」「アジアの成長ダイナミズムを関西にいかに取り込んでいくかが重要である」「京都には1000年の歴史に支えられた『知恵産業』があり、その推進を図ることが関西の潜在力強化につながる」「関西においてもEPAを推進するために、農業問題に踏み込んだ対応策を考えたい」「神戸、大阪、京都などが一体となり、また文化遺産を活用して国内外に『関西』をアピールしていきたい」などの意見が出された。

御手洗会長、インフラ整備へ期待感表明

■ 総括

最後に御手洗会長は、「環境、イノベーション創出、地域活性化という重要課題は、それぞれが互いに関連しており、一体となった取り組みが有益である。その意味で、水素エネルギーの活用、神戸のポートアイランドに代表されるような、地域に根差した産業拠点の発展、イノベーション創出の基盤となるインフラ整備に向けて、会員各位の活躍を大いに期待している」などと述べ、懇談会を総括した。

【総務本部総務担当】
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