日本経団連タイムス No.2894 (2008年2月21日)

「今後の宇宙開発利用」

−谷口・宇宙開発利用推進委員長が理事会で報告


日本経団連・宇宙開発利用推進委員会の谷口一郎委員長は、19日に東京・大手町の経団連会館で開催された日本経団連の理事会において、今後の宇宙開発利用について報告を行った。報告の概要は、次のとおり。

■ 準天頂衛星システムについて

準天頂衛星システムとは、準天頂衛星と呼ばれる、日本の天頂近くの高い軌道に位置する日本版GPS衛星によって、ビルや山陰による電波の遮断を防ぎ、高精度の測位を行うものである。

この構想は宇宙の商業利用活性化を目的に、2001年に日本経団連がシステム構想を提案したもので、官民連携によって進められている。09年度に、官がまず初号機を打ち上げて技術実証を行い、官民共同による利用実証の成果も踏まえてさらに衛星を2基打ち上げ、24時間利用できるシステムを構築する予定になっている。

■ 宇宙開発利用の推進を図るための法整備について

まず「地理空間情報活用推進基本法」であるが、自民・公明・民主の3党が議員立法として国会に共同提出し、07年5月に成立した。これは、衛星測位情報と電子地図を一体化した地理空間情報の活用を高度化し、国民生活の質の向上と、産業の発展を図るものである。

また「宇宙基本法案」は、安全保障、産業化、研究開発を三つの軸として日本の宇宙政策を推進しようとするもので、07年6月に議員立法で国会に提出されているが、いまだ審議に入っていない。この法案が成立すると、衛星測位システムの確立にとって大きな追い風となることもあり、日本経団連としては、早期成立を訴えている。

■ 「地理空間情報活用推進基本法」の背景と期待される効果

「地理空間情報活用推進基本法」に関連しては、今後、さまざまな新事業や新サービスの創出が期待されている。精度の高い基盤地図情報と測位衛星から提供される位置、時間などの情報を組み合わせて活用することで、防災・国土管理システムの整備、現状よりもはるかに精度の高いITS、カーナビ、パーソナルナビの導入、あるいは物流管理や観光案内の充実など、幅広い分野における活用が期待される。

もちろん、産業界での利用のみならず、行政の効率化や高度化への活用も大きく期待されている。

■ 衛星測位に係る推進体制

民間では昨年2月に衛星測位利用推進センター(SPAC)を設立し、産学官一体となった地理空間情報の利活用推進に向けた活動を進めている。

■ おわりに

諸外国がそうであるように、宇宙開発利用は、国益確保の観点から国家主導で進められるべきものである。他方で、新技術の開発や新事業の創出が期待される最先端分野でもあり、産業界としても積極的に関与する必要があると思う。日本経団連理事各位も、ぜひ、産業競争力強化、経済活性化といった観点から、広く宇宙に対する関心を持っていただければと考える。

【産業第二本部技術担当】
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