日本経団連タイムス No.2895 (2008年2月28日)

道州制シンポジウム、大分で開催

−道州制導入後の日本の姿で議論


日本経団連(御手洗冨士夫会長)と経済広報センター(同)は21日、大分市において、九州経済連合会(九経連、鎌田迪貞会長)との共催によりシンポジウム「道州制で日本を変える」を開催した。日本経団連は、昨年3月に発表した「道州制の導入に向けた第1次提言」 <PDF> において、道州制導入に向けた国民的な気運を高める活動を各地で展開していくことを表明しており、今回のシンポジウムは昨年9月の東京、11月の名古屋での開催に続き3回目となる。

シンポジウムには、日本経団連および九経連の会員や、経済広報センターの社会広聴会員、地方自治体関係者、一般参加者など500名以上が参加し、鎌田九経連会長と御手洗会長の主催者あいさつに続いて、パネルディスカッションが行われた。

■ 鎌田九経連会長、御手洗会長主催者あいさつ

鎌田九経連会長は、道州制の導入には、国が国家の存続に必要な施策に集中することや国から道州、および都道府県から市町村への大幅な権限と財源の移譲が重要であるとし、九州府の実現により自立的な経済圏がつくられるとともに、多極分散型国土の形成を通じて東京一極集中の是正も可能になると述べた。

続いてあいさつした御手洗会長は、道州制は地方分権改革や国・地方を通じた行財政改革などを含む「究極の構造改革」を実現するものという日本経団連の基本的な考えをあらためて強調した。また、故郷である大分に戻ると地方に活力を取り戻さねばならないという危機感を持つと述べ、人口やGDPなどがオランダ一国に匹敵し、広域経済圏としての潜在力を有する九州が一体となって産業振興に取り組み、世界市場から資金を調達すれば、東アジア経済圏の中心になるのも夢ではないとの期待を示した。

■ パネルディスカッション

続くパネルディスカッションでは、道州制の意義・目的や、道州制導入による行政や住民生活の変化、道州制の実現に向けた取り組みなどについて、コーディネーターと5人のパネリストとの間で活発な議論が行われた。

昨年10月に県で道州制研究会を設置した広瀬勝貞・大分県知事は、制度論ばかりでは道州制に対する住民の理解は得られないと指摘。道州制のメリットとして、九州が一体となって農林漁業や自動車産業などの振興が行えることや、効果的な医師不足対策、自主的な経済政策に取り組めることなどがあると述べた。

経済界の立場からは、池田弘一・日本経団連評議員会副議長・道州制推進委員会共同委員長が、基礎自治体を充実させることで住民のメリットを明確にすべきと強調。自身がアサヒビールの九州地区本部長を務めたときの経験から、企業が活動するにあたって、九州内での交通インフラ網整備が必要であると述べた。大野芳雄・九経連副会長は、国家財政が縮小する中で国から地方へ画一的に配分するやり方では地域活性化は達成できず、地方分権と合わせて、税源移譲が大きな課題であると主張した。

有識者の立場からは、矢田俊文・北九州市立大学学長が、効率性と一体性の原理のもとで展開される広域行政に加えて、分権性、補完性、近接性の原理に基づいて地域主権を確立することが道州制の意義だと述べた。また林宜嗣・関西学院大学教授は、人口集中や地域間格差は全国画一的な政策では是正できず、地方分権を進めて、地域に責任、裁量、財源を持たせる道州制が必要であるとの持論を述べた。

日本経団連では、シンポジウムでの議論も踏まえつつ、今後も全国各地で同様のシンポジウムを開催する予定。

【産業第一本部行革担当】
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