日本経団連タイムス No.2895 (2008年2月28日)

国際会計基準に関する欧州調査実施


日本経団連は、12日から15日の日程で、国際会計基準に関する欧州調査を実施した。

国際会計基準(IFRS)は、2005年からEU域内の証券市場における統一基準として採用されたのを皮切りに、カナダ、オーストラリア、インド、中国、韓国など世界100カ国以上で使用されており、グローバルスタンダードとしての位置付けを固めつつある。昨年11月には、米国証券取引委員会(SEC)が米国市場に上場する外国企業にIFRSの選択を容認しており、米国国内企業にも使用が認められる可能性が高くなっている。

現在、日本の証券市場では、原則としてIFRSの使用は認められていないが、今回の調査は、このような世界的な流れを踏まえ、今後、日本の会計制度の方向性を検討する上での参考とするもの。今回から2回にわたり、調査の概要等について紹介する。(後編は次号参照)調査団の団長は、八木良樹日本経団連経済法規委員会企業会計部会長。訪問先は、欧州委員会、欧州議会、欧州産業連盟、国際会計基準審議会、英国財務報告審議会、仏財務省・国家会計審議会ほかである。

1.欧州におけるIFRSの定着度

EUでは05年から、上場企業グループの連結財務諸表に対してIFRSの適用を義務付けている。EUでは域内の資本移動の自由化のため各国でバラバラだった会計基準の統一を図る必要が生じIFRSが採用された経緯がある。適用開始から3年がたち、産業界、行政当局からは総じてIFRSへの統一は成功だったとの評価があった。一方で、導入に際し企業側では、2-3年前から準備を開始するなど、多大な時間、コストが費やされたことも事実である。また、昨今、IFRSが求める開示内容が過剰であるとの指摘もあった。

2.英仏におけるIFRSの利用

IFRSは、あくまで資本市場に上場する企業グループの連結財務諸表を作成するための基準として用いられており、配当規制や税務目的などに使用される個別財務諸表の作成や、非上場会社、中小企業の会計基準は、各国の国内会計基準が用いられている。特に、中小企業ではIFRSの認知度はいまだ低く、導入には否定的である。今後とも、国際的な投資家向けのIFRSと各国国内会計基準は並存していくものと思われる。

3.各国会計基準設定主体の役割など

EUの統一基準としてIFRSが採用された後も、各国の国内会計基準は並存しているため、各国の会計基準を設定する機関は存続されている。欧州では、国際会計基準審議会(IASB)が米国の会計基準設定機関であるFASBとの関係を強化していることに対し、IFRSの検討に米国の考え方がより強く反映されかねないとの懸念の声がある。これに対応するよう、フランスでは国内の会計基準設定主体の機能を強化し、国際的な発言権や貢献度を高めて行くといった動きも見られる。また、IASBは、企業業績の報告様式を抜本的に見直し、当期利益を廃止するといった検討を米国FASBと共同で進めており、これらに対する強い懸念が示された。IFRSの世界的な普及に伴い、IASBの公的な責任は一層高まっており、市場関係者などの意見を十分に反映するよう、デュープロセスや説明責任を重視すべきとの指摘も多かった。

【経済第二本部税制・会計担当】
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