日本経団連タイムス No.2897 (2008年3月13日)

中小企業委員会で企業事例聴取

−「冠婚葬祭業における新たなる挑戦」二つの差別化戦略
/「洗濯代行サービス新業態への挑戦」日本初のサービス


日本経団連は2月29日、東京・大手町の経団連会館で中小企業委員会(指田禎一委員長)を開催し、アーバンフューネスコーポレーションの中川貴之社長から「冠婚葬祭業における新たなる挑戦―マニュアル的な儀式ではなく、お別れの場をつくる」について、アピッシュの山崎美香社長から「洗濯代行サービス新業態への挑戦」について講演を聴取した。概要は次のとおり。

1.アーバンフューネスコーポレーション

同社は首都圏を中心に葬儀の企画、運営を行う会社であり、2002年に設立された。同社の特徴としては、二つの差別化戦略が挙げられる。一つは、これまでの葬儀とは違った葬儀を行うこと、もう一つは葬儀の段取りをするだけではなく、葬儀後のサポートまですることである。

これまでの葬儀は、慣習やしきたりが最優先となり、決まった形で送るということが主流であったが、同社は葬儀を、故人とその家族のために行うものと位置付け、その人らしく、心のこもったお別れができる場として、テーマを持った葬儀を提案・実施し、差別化を図っている。

また、これまでの葬儀社は、葬儀の段取りを行うだけだったが、同社では事前相談から「四十九日」まで完全サポートする体制を整えており、葬儀を中心に長く広く顧客の役に立てるようにして差別化を図っている。

これらのサービスを行う上で、同社では次の四つの使命を掲げている。

  1. 葬儀の価値を変える
  2. 葬儀の価格を変える
  3. 葬儀の準備を変える
  4. 葬儀を「教育・人材」の場へと変える

これらの使命に基づき、今後も同社の信条である「命をつなぐ葬儀」を提案・実施していくとのことである。

2.アピッシュ

同社が行うサービスは「WASH & FOLD」という名称で、洗う・干す・たたむという洗濯のすべてを代行するというもので、アメリカでは普及しているが、日本では初めてのサービスである。このような日本初のサービスを行うにあたり、事業戦略として、同社は価格設定とブランド化を中心に取り組みを進めてきた。

まず、価格を設定するにあたっては、(1)アメリカで設定されている価格(2)消費者にわかりやすく、許容できる価格(3)競合サービス(クリーニング等)の価格――の3点を検討し、その結果、専用バッグに詰め放題で定額設定とした。

次にブランド化への施策として、(1)「WASH & FOLD」の知名度向上(2)女性支持者の獲得――の2点に取り組んできた。前者については、パブリシティーや広告を活用している。後者については、洗練された、かつ清潔感のある店舗を設置するとともに、安心して女性が入店できるように女性スタッフを必ず配置するようにしている。

経営課題としては、前例のないサービスを行っているため、許認可取得のハードルが高く、スピード感を持った店舗展開ができないこと等を抱えているが、今後は、日本国内における「WASH & FOLD」サービスの定着化に向け、コンビニエンスストアやマンションのコンシェルジェサービスなど、新たなチャネルの開拓により顧客を創造し、サービスを通じて「豊かなライフスタイル」を提供していくとのことである。

【労政第一本部企画担当】
Copyright © Nippon Keidanren