日本経団連タイムス No.2898 (2008年3月20日)

四国地域経済懇談会、高知で開催

−「成長創造〜活力あふれる日本・四国の実現を目指して」テーマに


日本経団連(御手洗冨士夫会長)、四国経済連合会(四経連、大西淳会長)は12日、高知市内のホテルで「第44回四国地域経済懇談会」を開催した。懇談会には、日本経団連側から御手洗会長、草刈隆郎副会長、渡文明副会長、古川一夫副会長、谷口一郎評議員会副議長、鈴木正一郎評議員会副議長、池田弘一評議員会副議長が、四経連側は、大西会長はじめ会員約150名が参加し、「成長創造-活力あふれる日本・四国の実現を目指して」をテーマに意見を交換した。

御手洗会長、構造改革推進の重要性指摘

四経連の大西会長は開会あいさつで、四国経済について、足元の景気後退懸念に加え、東京圏への一極集中の加速化とそれに伴う地域格差の拡大により地方の持続的発展は容易ではなく強い危機感を抱いていると述べた。その上で、四国が困難を乗り越え、新たな成長の道を切り拓いていくための取り組みとして、(1)地域の特性や強みを地域づくりに活かしていくこと(2)高速交通ネットワークなどの四国の自立と競争のために必要な社会基盤の整備(3)地方分権の促進による生き生きとした地方からなる国土づくりと、その実現のための道州制の導入――を強調した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、国民一人ひとりが豊かさを享受できる「希望の国」を実現するためには、引き続き構造改革を強力に推進していくことが不可欠と指摘。提言「成長創造〜躍動の10年へ」の中で、目に見える形で改革を確実に前進させるために、幅広い波及効果を有する具体的なプロジェクトとして、(1)世界最先端の電子政府・電子社会の構築(2)革新的な環境エネルギー技術の開発による国際的イニシアチブの発揮(3)道州制の実現に向けた広域経済圏の形成――を掲げているが、中でも道州制の実現は、地域の自立を促し、地域経済の活性化のための最も効果的な手段であると強調した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連側から渡副会長が地球温暖化問題に対する取り組み、古川副会長が新たな通信・放送融合法制のあり方、谷口副議長が科学技術を基点としたイノベーションの創出についてそれぞれ報告した。「地球温暖化問題」では、温暖化対策を推進する上でカギとなる技術の開発と普及を具体化する仕組み構築の働き掛け、「通信・放送融合法制」では、情報通信産業の国際競争力強化に向けた新たな通信・放送の制度的枠組みに関する取り組み、「イノベーションの創出」では、イノベーション創出や産業競争力強化の観点から今後強化すべき科学技術政策の検討や、理工系博士人材の育成、産学人材育成パートナーシップの取り組み――などを説明した。

一方、四経連側からは、まず山下直家副会長が「地方分権型社会の構築」について報告。生き生きとした地方を創造するためには、地方に権限と財源を移譲し、地方自らが責任を持って決定し実行していく、地方分権型社会の構築が必要と指摘した。また、道州制導入に際しては、地方が立ち行くような制度設計が必要であるとして、国から地方への権限の移譲に見合う適切な税源移譲や、道州間の財政調整システムの構築が不可欠と述べた。

次に高橋祐二副会長が「四国の強みを活かした競争力ある地域づくり」について報告。先端的な素材産業をはじめ、独自の技術によって特定分野で日本一、世界一のシェアを誇る企業の産学連携による新産業創出や産業クラスター形成の取り組みのほか、四国霊場八十八カ所に象徴される歴史文化、四万十川に代表される豊かな自然、食材など、地域の強みや特性を活かし、四国が一つとなって四国ブランドを高めていくことが不可欠と述べた。

続いて、青木章泰副会長が、「地域の自立と安心・安全な暮らしを支える社会基盤整備の促進」について報告。本四連絡橋の利用拡大や地域への波及効果を図るため、道路特定財源の活用等で料金の引き下げを提案した。また、高速道路の「四国8の字ネットワーク」については、産業立地、県をまたがる広域観光ルートの形成、道州制を見据えた四国4県の機能分担や総合力発揮のための基礎的インフラとして期待されることから、道路特定財源を維持し、これによる早期整備を進めるべきであると強調した。

インフラ整備や道州制導入など

■ 意見交換

第2部の意見交換では、四経連側から、(1)道路特定財源問題の影響で地方の道路整備への批判があるが、地域活力の維持のためにはインフラを整備し、交流人口の拡大や産業振興につなげることが必要(佐伯達雄中村商工会議所専務理事)(2)地の利を活かし、東アジアの活力を取り込んでいくことが産業の活性化のカギであり、東アジアとの交流連携をさらに推し進めることが必要(入交章二常任理事)(3)「花・人・土佐であい博」をはじめ各地でさまざまな観光行事を企画しており、観光振興への取り組みが、県を越えた四国の一体化を先導する(半田久米夫高知放送社長)(4)道州制に対する四国圏知事の姿勢は前向きであるが、道州制の導入に向けては、何よりも国民の理解促進や世論の盛り上がりが不可欠(千葉昭常任理事)(5)「四国圏広域地方計画」の策定は、四国の総力を結集した地域づくりへの重要なステップであり、四国が一つになり計画の具体化に取り組むことで、四国の活性化とともに四国州の実現に向けた機運が高まることを期待(西山俊彦常任理事)(6)四国が自立的に発展していくためには、地域産業の競争力をさらに高めていく必要があり、地域の特性を熟知した大学等との産学官連携が重要(山本吾一兼松エンジニアリング会長)――などの発言があった。

これに対して日本経団連側は、(1)高速道路はネットワーク状に整備されてこそ有効に機能し、周遊型観光の増加や地域産業の活性化、雇用の創出などの効果をもたらす。「8の字ネットワーク」が四国経済の発展に必要不可欠であることを引き続き主張すべき(渡副会長)(2)東アジアとの交流促進の観点から港湾、空港、道路などの物流インフラは重要。四国全体の経済発展のためには、産学官が一体となり検討を行うことを期待(同)(3)観光分野での広域連携の取り組みを今後、中国、韓国など北東アジアからの旅行者の増加につなげていくことが重要(草刈副会長)(4)道州制は各地域が本来持つパワーを引き出し、住民が生き生きと働き暮らせる地域の確立をめざすものであり、道州制に対する地域の企業や住民の理解を得るため、道州制の導入で地域の経済・社会がどう変わるのかを身近な課題に即して具体的に示していく(池田副議長)(5)「四国圏広域地方計画」の策定を通じて、地域のことは自ら決めていくという機運が高まり、四国全体として独自の地域経営のあり方を模索していくことを期待(同)(6)域内の企業ニーズの集約や大学の研究分野のデータベース化などの環境整備を広域的に推進する取り組みを強化することが、地域振興・活性化につながる(鈴木副議長)――と述べた。

御手洗会長が会議を総括

総括で御手洗会長は、洞爺湖サミットを控え、環境問題への関心が高まる中、経済成長と環境対策の両立のためには技術革新が不可欠と指摘。環境、イノベーション創出、地域活性化は一体的な取り組みが有益であると述べ、地域の強みを活かした産学官連携による新産業や産業クラスター創出に向けた四国経済界の取り組みに期待を示した。

◇◇◇

懇談会に先立ち日本経団連首脳は、コンデンサ用セパレータメーカーとして世界70%のシェアを誇るニッポン高度紙工業(高知市)を訪問、同社春野工場の生産ラインを視察した。

【総務本部総務担当】
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