日本経団連タイムス No.2899 (2008年3月27日)

第36回中国地方経済懇談会、岡山で開催

−日本経済の持続的成長と中国地域のさらなる発展へ


日本経団連、中国経済連合会(中国経連、福田督会長)は13日、岡山市内のホテルで「第36回中国地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、日本経団連側から御手洗冨士夫会長、張富士夫副会長、渡文明副会長、古川一夫副会長、谷口一郎評議員会副議長、池田弘一評議員会副議長が、また、中国経連側は、福田会長はじめ会員約180名が参加し、「成長創造〜日本経済の持続的成長と中国地域のさらなる発展に向けて」をテーマに意見交換を行った。

冒頭のあいさつの中で福田会長は、中国地方の経済情勢について、「景況感は昨年11月に比べ、やや悪化が見られる」「これまで好調を維持し、景気回復を牽引していた製造業においても収益が悪化しており、慎重な見方が強まりつつある」と懸念を表明した。そこで、中国地方が地域間競争の中で埋没することなく、その独自性を発揮するには、「地域内の経済循環」を活発化させるために、製造業の活力をサービス業をはじめ産業全般に波及させる必要があると述べた。さらに、今後、中国地方は一体的な地域として存在感を高めることが重要であり、そのためには、(1)産学官連携の促進(2)広域観光の推進(3)道路・港湾などの社会基盤整備――に結束して取り組んでいかなければならないとの考えを示した。

続いてあいさつした御手洗会長は、「希望の国」を実現するためには国民の目に見える形で改革を確実に進める必要があると述べた。その具体的プロジェクトの一つである道州制の実現については、広域経済圏の形成が重要なステップであると述べた。また道州制は「究極の構造改革」であり、地域の自立を促し、地域経済を活性化する最も効果的な手段であると強調した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連側から張副会長が「経済連携の拡大と深化に向けた取り組み」、古川副会長が「科学技術を基点としたイノベーションの創出」、池田評議員会副議長が「道州制の導入に向けた取り組み」について、それぞれ報告した。この中で張副会長は「日本経団連としては今後、日米・日EUのEPAを含め、スピード感を持って質の高いEPAを締結するよう、引き続き関係方面に働き掛けていくとともに、東アジアにおける経済連携ネットワークの構築に向けて鋭意取り組んでいく」と説明。古川副会長は、「日本経団連では、わが国の科学技術政策を、イノベーション創出や産業競争力強化といった観点から改めて精査し、今後強化すべき施策等を提言として取りまとめたいと考えている」「日本経団連では、産学連携による高度IT人材の育成に向けたモデル拠点づくりを進めている」と述べた。また池田評議員会副議長は、道州制導入には、制度に対する地域企業、住民の理解が不可欠であることから、日本経団連が公表する「第2次提言―中間とりまとめ」 <PDF> では、道州制の導入で地域の経済・社会がどう変わるのか、また、そのメリットを身近な具体例で示していくとの考えを示した。

一方、中国経連側からは、まず末長範彦副会長が「道州制導入の推進」について、(1)幅広い住民の理解とコンセンサスを得ていくため中国地方5県の経済団体などが共催して昨年7月に「道州制シンポジウム」を開催した(2)道州制検討部会を設置し、機会をとらえ関係各所に向け提言・要望を行っていく(3)引き続きシンポジウムの開催等、道州制導入に向けた機運の醸成を図りたい――と報告した。

次に丸磐根副会長が「地域の競争力強化に向けた社会資本整備への取り組み」について発言。道路整備に関しては、山陰自動車道、中国横断自動車道が全線「真に必要な道路」であること、港湾整備については、「基礎素材型産業を支える産業港湾の再生・機能強化」を掲げ、山口県の徳山下松港を「大水深の国際バルクターミナル」とすべきことを指摘し、これら社会資本の整備に向けた活動を一層強化していきたいと述べた。

続いて藤原睦躬副会長が「地域産業の活性化に向けた産学官連携の推進」について報告し、「中小企業の競争力強化に向けて、中小企業のニーズに合わせた産学官連携の仕組みや支援方法の充実に努めていく」「機械化、省エネ化など工業技術を農業に応用し、生産性、品質向上をめざした農工連携の取り組みを進めていく」などの考えを示した。

地域活性化策などで意見交換

■ 自由討議

第2部の自由討議では、中国経連側から、(1)国税と地方税の一体的な改革を行う必要がある。すなわち地域間の偏在性が低く景気に左右されにくい地方税体系を構築すること、地方消費税を充実させていくことが求められる(守屋勝利理事)(2)中国地域は山陽側に基礎素材型コンビナートが集積していることなどから温室効果ガスを大量に排出する特性を持っている。製品などの安定的供給を確保するとともに温室効果ガスの排出削減に向けあらゆる側面から積極的に対策を進めていくことが重要(千葉泰久資源環境委員会副委員長)(3)地域医療をめぐる不安や不満が高まる中、「行政区域を越えた医療連携体制の構築」「医療と介護の連携」「ICTを活用した遠隔医療や診療情報の共有化」「へき地・救急医療へのヘリコプターの活用」などの実施や本格的導入に取り組まなければならない(今中亘地域づくり委員会副委員長)(4)通信・放送の総合的な法体系の見直しを契機に、情報伝送媒体と一体であったコンテンツが単独のメディアから解放され、メディア間での多角的な利用が進み、この結果、新たなビジネスモデルが創出されるものと期待している(岡田顯彦常任理事)(5)観光立国推進基本計画の中の一つである「日本人国内観光旅行による1人当たり宿泊数の増加」について、中国地方では相当の工夫・知恵が必要である。「石見銀山」が世界遺産に登録されるなどの効果で、多くの観光客が訪れるようになったが、効果を持続させるのは至難の業である(岩谷百合雄常任理事)――などの発言があった。

これに対して日本経団連側は、(1)現行の地方税体系は景気変動の波を受けやすい地方法人二税に偏り過ぎていることからこれを国税へと一本化することを提案している(張副会長)(2)地球温暖化対策のカギである技術開発については、政府の「クールアース・エネルギー技術革新計画」の推進に積極的に取り組んでいく(渡副会長)(3)病院と診療所の役割分担と連携の促進、医療の透明性の確保などを通じて効率的な医療提供体制を構築していきたい(谷口評議員会副議長)(4)従来のメディアは中央からの影響を強く受けやすい構造となっているが、新しい法制の実現や技術革新の成果を活かし、企業、地域社会が直接情報を全国・世界中に発信することが容易となる(古川副会長)(5)旅行者の宿泊日数を増やすには、通過型から滞在型の観光地に脱却すべく、観光資源を点としてではなく面でとらえることが必要。例えば各県の観光資源を線で結んだ観光マップを作成するなど広域的な観光振興を進める必要がある(渡副会長)――と述べた。

総括で御手洗会長は、「環境、イノベーション創出、地域活性化という重要課題は、それぞれが相互に関連しており、一体となった取り組み方法が有効である」と述べ、中国地方が、地域の特性を活かしながら、港湾等の社会インフラや物流などの立地環境の整備を図るとともに、産学官連携による新産業や産業クラスターの創出に向けて取り組むことに期待を示した。

【総務本部総務担当】
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