日本経団連タイムス No.2900 (2008年4月3日)

金融商品取引法等改正案、概要などの説明を聴取

−金融制度委員会資本市場部会


日本経団連金融制度委員会資本市場部会(島崎憲明部会長)は3月25日、東京・大手町の経団連会館で、金融庁総務企画局の池田唯一市場課長を招き、金融商品取引法等改正案の概要等について説明を聴いた。
説明の要旨は次のとおり。

今回の金融商品取引法等の改正案は、金融・資本市場の国際競争力強化をめざすもので、昨年12月に金融審議会第一部会・第二部会の検討結果を踏まえて取りまとめられた「金融・資本市場競争力強化プラン」に掲げられた事項のうち、法律改正を要する事項を盛り込んでおり、その柱は「家計金融資産への適切な投資機会の提供」「内外企業等への成長資金の供給」「金融サービス業による高い付加価値の創出」である。

今回の改正案では、第一に、多様な資産運用・調達機会の提供の観点から、(1)参加者をプロ投資者(特定投資家)に限定した取引所市場の創設(2)ETF(上場投資信託)等の多様化――が盛り込まれている。特に、プロ向け市場については、現行の開示規制を免除し、特定投資家に対する簡素な情報提供の枠組みを別途設けることとされ、一方で一般投資者への転売は制限される。また、同市場における自主規制業務については、その一部を自主規制法人以外に委託することも容認される。またETF等の多様化に関連して、金融商品取引所の業務範囲の見直しが行われ、排出量取引に関する市場の開設を金融商品取引所の兼業業務として追加することとしている。

第二に、多様で質の高い金融サービスの提供の観点から、証券会社・銀行・保険会社の間のファイアーウォール規制の見直し等が盛り込まれている。具体的には、証券会社・銀行・保険会社の間の役職員の兼業規制が撤廃され、情報共有の制限が緩和される一方で、利益相反行為による顧客利益の不当な侵害を防止するため、適正な情報管理と適切な内部管理体制の整備が証券会社・銀行・保険会社の各社に求められることとなる。

第三に、公正・透明で信頼感のある市場の構築の観点から、課徴金の金額水準の引き上げ、対象範囲の拡大等が盛り込まれている。まず金額水準の引き上げに関しては、インサイダー取引については、現行では重要事実公表日翌日の終値を基準に算定するところ、重要事実公表後2週間の最高値を基準とすることとしている。相場操縦や風説の流布・偽計については、現行では違反行為後1カ月の売買で確定した損益であるところ、1カ月の最高値を基準とすることとしている。発行開示書類の虚偽記載については、現行では募集・売出し総額の1%(株式は2%)のところ2.25%(株式は4.5%)に引き上げられる。また継続開示書類の虚偽記載については、例えば有価証券報告書について現行では時価総額の10万分の3または300万円であるところ、10万分の6または600万円に引き上げられる。また、過去5年間に課徴金の対象となった者が再度違反した場合には課徴金の額が1.5倍に加算される一方、当局の調査前に違反行為を報告した場合には課徴金の額を半額に減算される。さらに、これまで課徴金の対象とされていなかった公開買付届出書・大量保有報告書の虚偽記載・不提出、発行開示書類・継続開示書類の不提出等が新たに課徴金の対象とされる。

なお、先般問題となった大量保有報告虚偽事件を踏まえ、訂正命令を行った開示書類について、例外的に縦覧に供しないものとすることができる枠組みを導入することとしている。

【経済第二本部経済法制担当】
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