日本経団連タイムス No.2901 (2008年4月10日)

財政制度委員会を開催

−「財政改革に向けた課題」、与謝野自民党税制改革研究会会長から聴取


日本経団連(御手洗冨士夫会長)の財政制度委員会(氏家純一委員長)は3月31日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、自由民主党財政改革研究会会長の与謝野馨衆議院議員から、「財政改革に向けた課題」をテーマに説明を聴いた。

冒頭、与謝野会長は、わが国の危機的な財政状況について説明した上で、財政悪化の影響について言及。典型例として長期金利の上昇を挙げ、「既に大量の国債発行により、日本の財政は金利に対して極めて脆弱な体質となっている」と指摘し、金利上昇による財政破綻の可能性を強調した。さらに、大きな負担を将来世代に先送りすることで、世代間の不公平を招くことも指摘した。

続いて、財政健全化に向けた現在の取り組み状況について説明。政府の「基本方針2006」に基づき計画的に進められていることを紹介し、「まずは2011年度のプライマリーバランスの均衡を確実に達成する。その後は、利払費を含む財政収支の均衡をめざし、2010年代半ばには、債務残高対GDP比の安定的な低下を実現する。このようにして、借金が増えない状況をつくり出すこととしている」と述べた。また、財政再建を進める際には、成長力を強化することは当然に重要であるものの、成長がもたらす歳入増などを過度に当てにすることは適切な政策対応ではなく、消費税率の引き上げなど、税制面での措置についても検討することが不可欠と指摘した。

いわゆる「埋蔵金」の議論については「特別会計の積立金は、それぞれ目的に沿って積み立てられているものである。必要以上のものについては一定のルールに基づき一般会計などに繰り入れている」と説明。保険事業の積立金を取り崩すことは不可能であることや、財政融資資金特別会計の積立金の一部を国債残高圧縮に活用してきたことなどを紹介した。さらに、国の財務諸表は公表されており隠されているものではないことから、そもそも「埋蔵金」という言葉自体が適当ではないと説明した。

また、先般、福田総理が、道路特定財源については今年の税制抜本改革時に廃止し、09年度から一般財源として活用する、と表明したことに対して、「これは本年、税制抜本改革を行うことを総理が明言したと理解できる」と述べた。その上で、09年度に基礎年金の国庫負担の引き上げを控え、消費税の扱いも含め、国民の理解を得られる税体制の構築に向けて、今年の早い時期から議論を進めていきたいと述べた。

最後に与謝野会長は、現下の政治情勢について触れ、ねじれ国会の影響により意思決定に時間を要することとなっているが、「世界経済は劇的に変化しており、国民生活の向上や日本経済の発展に向けて適切な政策を遂行する上では、政治決断が遅れることは何としても回避しなければならない」と述べ、財政健全化を含め、重要政策事項への取り組みに対する強い決意を表明した。

【経済第一本部経済政策担当】
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