日本経団連タイムス No.2901 (2008年4月10日)

セミナー「世界に拡がるEU規制・標準に日本はどう立ち向かうか」開催

−経済広報センターと共催/EUの規制・標準の動向と日本の課題で講演聴取


経済広報センター(御手洗冨士夫会長)と日本経団連は共催で、3月27日、東京・大手町の経団連会館において、セミナー「世界に拡がるEU規制・標準に日本はどう立ち向かうか」を開催した。同セミナーには、会員企業・団体などから約130名が出席した。

当日は、早稲田大学大学院の須網隆夫教授、トヨタIT開発センターの内海善雄最高顧問(前国際電気通信連合[ITU]事務総局長)、日本化学工業協会REACHタスクフォースの庄野文章事務局長代理、日本機械工業連合会の石坂清事務局長兼標準化推進部長が、それぞれの立場からEUの規制・標準に関する動向と日本の課題について講演を行った。続いて、須網教授が講演全体を通したコメントを述べた後、同氏の司会でパネルディスカッションを行った。

講演の中で須網教授は、EUが独自に作成した規制が事実上世界に拡大しつつあることを指摘し、EUは域内市場統合に向けた各国の規制・規格の統一を進める中で、「市場は規制によって人為的に形成されており、その形成の仕方により事業者は有利にもなれば不利にもなる」という考えを持つようになり、その結果、EUが標準化に対して積極的に対応するようになったことを強調した。

内海最高顧問は、EU主導で通信規格の作成が進んだ例として第二世代携帯電話などを紹介し、EUの標準化戦略が、域内市場統合に向けた規格統一という名目で独自技術を優先的に規格化し、域内から周辺国さらには世界の市場を狙ったものであることを指摘した。また同氏は、日本の問題点として、日本からの規格提案はEUに対抗され仲間外れにされるおそれが強い点を指摘し、人材交流や自前主義から共同開発への舵切りなどの対策が必要であることを強調した。

庄野事務局長代理は、EUの化学物質に関する新たな法規制REACHが、化学物質のみならず化学物質を用いた全製品を対象とした管理規制であり、EU市場のみならず世界市場に与える影響力が大きいことを指摘した。また同氏は、日本の課題として、化学産業における対EU戦略の見直しを挙げるとともに、REACHを単にEUの化学品管理規制ととらえるのではなく、化学品管理の国際的な潮流の一端としてとらえるべきであることを強調した。

石坂事務局長兼標準化推進部長は、1985年にEUで導入された法律と規格に関する新しい枠組み「ニューアプローチ」と、この枠組みに基づいた例として機械指令・機械安全規格を紹介し、この枠組みの優れた点が、技術仕様に柔軟性を持たせ、技術進歩への対応を可能にしていることを指摘した。また同氏は、日本は制度や枠組みの創出力でEUに負けており、EUの仕組みに合わせるのか、より進化した仕組みを創出するのか、議論が必要であるとの問題提起を行った。

講演全体を通したコメントとパネルディスカッションにおいては、規制や標準はビジネスに大きな影響力を持ち得ること、EUが規制・標準に対して大きな影響力を持っていること、EUが域内市場統合を進める中で培ったノウハウなどを活用していることが指摘されるとともに、日本としての今後の対応などについて活発な意見交換が行われた。

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