日本経団連タイムス No.2902 (2008年4月17日)

提言「グローバルな投資環境の整備のあり方に関する意見」公表

−わが国海外投資の法的基盤の整備等に向けて


日本経団連は15日、提言「グローバルな投資環境の整備のあり方に関する意見―わが国海外投資の法的基盤の整備等に向けて―」を公表した。同提言は、グローバルなビジネス環境整備を求めた提言「対外経済戦略の構築と推進を求める」(2007年10月)のフォローアップの一環として取りまとめたものである。

近年の海外投資の増加を背景として、関税等の貿易障壁の削減・撤廃にとどまらず、投資にかかわる外資規制等、海外投資活動に関する障壁の削減・撤廃がますます重要になっている。

日本経団連では、かねて国際投資ルールの構築や経済連携協定(EPA)・投資協定による投資の自由化・円滑化を政府に働きかけてきたが、WTOドーハ・ラウンドにおいて投資は交渉対象とならず、一方、世界では多くの二国間投資協定や、投資ルールを含む自由貿易協定(FTA)が締結されており、わが国は大きく後れをとっている。

わが国企業のネットワーク化が進む東アジア地域についても、二国間EPAの投資自由化のレベルは現状維持にとどまるものが多く、多国間ルールの整備もあまり進んでいない。また、投資協定・投資章を含むEPAが実現しても、相手国によっては必ずしも十分な内容となっていない。

このような現状と課題を踏まえ、同提言では、わが国海外投資の法的基盤の整備等に向けて実現すべき内容・相手国を次のとおり整理した。

1.投資に関する質の高い法的基盤の早急な整備

(1)投資の保護・自由化の推進

まず、多国間投資ルールの整備に向け、WTO次期ラウンドで投資を交渉対象とするよう働きかけを継続すべきである。これを念頭に、当面、推進すべき事項として、第1に、現在交渉中のEPAと投資協定の早期妥結と発効に全力を尽くすことが最重要かつ喫緊の課題である。

第2に、投資章を含むEPAあるいは投資協定が未締結の重要な国・地域と早急に交渉を開始すべきである。交渉にあたっては、外資参入の自由化等を含む質の高い内容の早期実現をめざす必要があり、また、戦略的に重要な国やわが国の競争条件が第三国に劣後する国については、EPAの可能性を検討することが不可欠である。ただし、投資保護・自由化が急を要する場合には、EPAの前段階として投資協定を先行することもあり得る。また、短期間で質の高い合意が困難な場合には、将来、質の高い内容に改訂するための根拠規定を盛り込むことが重要である。対象国としては、(A)投資が比較的多く、投資保護・自由化の必要性が高い国(ブラジル、南ア、中・東欧諸国)、(B)資源・エネルギーの安定供給の確保など国益の観点から投資の保護・自由化を進めるべき国(中東、中南米、中央アジア諸国)が挙げられる。

第3に、既存の協定についても、投資の保護・自由化の水準の向上に向け、継続的に見直しを行うべきである。

(2)租税条約・社会保障協定の締結等の推進

投資協定・投資章を含むEPAのみをもって投資に係るすべての問題が解決するわけではなく、投資協定やEPAと並ぶ法的な基盤として、租税条約・社会保障協定の締結の推進が不可欠である。

2.ビジネス環境整備のための官民協議・対話の推進

事業展開にあたり課題の多い国について、ビジネス環境整備を目的とする官民合同の協議・対話を推進する必要がある。協定の有無にかかわらず、EPA・投資協定の一環として、またはそれに先行して、日々変化するビジネス環境やニーズに即し、民間から改善要望等を継続的に提起できる枠組みが必要である。

【国際第一本部貿易投資担当】
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