日本経団連タイムス No.2902 (2008年4月17日)

千葉県市川市の電子自治体への取り組みで説明を聴取

−先進的な電子社会実現に向け情報通信委員会開催


日本経団連の情報通信委員会(石原邦夫共同委員長、渡辺捷昭共同委員長)は2日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本で最も先進的な電子自治体として有名な千葉県市川市の井堀幹夫情報政策監(CIO)から、市川市における電子自治体への取り組みについて説明を聴いた。また、情報化部会が取りまとめた提言案「国民視点に立った先進的な電子社会の実現に向けて」の審議を行った。

まず、井堀CIOは、市川市の基本的なスタンスとして、(1)サービス向上(2)労働生産性向上(3)信頼・安心向上(4)民主主義進展(5)地域産業・住民活性化――の五つの観点を挙げ、これらを効率的に推進するためには行政の電子化が不可欠であると述べた。ただし、電子化は手段であり、目的はあくまでサービスや労働生産性の向上であることを強調した。

また、市川市では市長、副市長の下にCIOを置き、その下に各事業部門が配置されているという組織体制を明確にしている。これにより、CIOが部門横断的に電子化を推進できる体制を整えており、CIOは行政経営会議や庁議等のすべての重要会議に出席し、電子化推進の観点から提案を行うことができる。

そして、井堀CIOは、市川市における労働生産性の向上に向けた具体的な取り組みとして、1200種の業務、3500名の職員を対象に、職員の仕事内容と仕事量を徹底的に記録・分析し、業務プロセスの改善により、1850万円のコスト削減、29人分の人的資源の創出を可能にした事例を紹介した。市川市では、この業務改善システムをパッケージ化し、他の自治体に提供している。また、印鑑登録証明など23種の証明書類等を休日・夜間でも受け取れるよう、自動交付機を駅や公民館に設置したり、総務省と協力して税金や保育料をコンビニエンスストアで支払えるサービスを開始するなど、住民の利便性向上に向けた取り組みを推進していると述べた。市川市では、eモニター制度と呼ばれる仕組みを通じて市民からの意見や要望を随時募っており、自動交付機の設置やコンビニエンスストアを活用したサービスはいずれもこうした市民の声を踏まえて実現した。駅やスーパーマーケットなど、生活に身近な場所での行政サービスに対する市民のニーズは高く、今後もサービスの拡充を図っていく予定である。

続く意見交換では、市川市の先進的な取り組みを見た他の自治体は、どのような反応を示しているかとの質問に対し、井堀CIOが、「反応はまちまちであるが、自治体が実際にICT化を推進できるかどうかは、トップのリーダーシップによるところが大きい」とのコメントを述べた。

最後に、石原共同委員長が、トップとCIOで横串が通った推進体制が整っていること、市民目線で行政の業務プロセスの踏み込んだ見直しが行われていること、PDCAをしっかりと回し、継続的に見直しと改善が実施されていることを挙げ、市川市はまさに電子行政のモデルケースであると述べ、締めくくった。

また、当日は、提言案「国民視点に立った先進的な電子社会の実現に向けて」を審議し、委員会として承認した。同提言案は、15日の理事会における審議・承認を経て、公表された。(記事別掲

【産業第二本部情報通信担当】
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